最近、「木下貴司・瑠古堂書店」というタイトルのYouTubeチャンネルを時々視聴している。チャンネル登録者数はそれほど多くはないが、12分前後で松本清張の作品を紹介してくれるチャンネルで、私にとってはなかなか面白い。松本清張の作品なので推理小説が多く、当然のことだがネタバレはいっさいなし。先日も松本清張の『表象詩人』が紹介されていたので興味深く聞かせてもらったのだが、面白そうな小説だったので早速それが掲載されている『松本清張全集 39』を図書館に予約すると、ラッキーなことに翌日貸し出し可能の通知が来た。

 

 私はよく知らなかったのだが、もともと1972年に『週刊朝日』に連載されていた小説だそうである。40年の時を隔てて殺人事件の真相が解明されていく心理戦を中心とした物語なのだが、ストーリーの進展もさることながら、小説の中で外函付きの本が推理のポイントになっており、「そう言えば、最近外函の付いた本など見たことがないな~」と思って自分の書棚を見渡したところほんの何冊かしかその類の本がなかった。20年ほど前に若い頃に買ってずっと所蔵していた本の大半を古書店に売ったことがあって、そのときに外函付きの本も処分していたのである。

 

 

 アップした画像は大阪市立大学経済研究所編『経済学辞典』(岩波書店)で、大学の経済学部に入学して最初に買った本である。そういう経緯もあったので20年前に売らなかったのだろうが、その後この辞典を開いた記憶はない。奥付を見ると、「1965年9月21日初版」となっているが、現在ではこの辞典に掲載されている項目のほとんどはウィキペディアで検索すれば分かることだと思われるし、そもそも情報そのものも古くなっている項目も多いことだろう。その後、中央公論社から刊行された『世界の名著』シリーズも何冊か買った記憶があるが、あのシリーズも外函に入っていた。もっとも、読んだのは「アダム・スミス」だけだったが…。そういえば大阪市立大学もいつの間にか大阪府立大学と統合して大阪公立大学という名称になっているのだった。私は受験しなかったが、(今もそうだと思うが)当時は関西の受験生の間ではかなり人気のある大学だった。

 

 話が別の方向にそれたが、以前と比べて本の体裁は相当変化した。ハードカバーの本などほとんど見かけないし、まして外函付きの本など最近は見たこともない。本が売れないこの時代にそんなことをしたら本の製作にコストがかかりすぎるということがその理由だろうが、本を読むという行為そのものにそれほど価値を見いだすことができない人が激増しているのだろう。本以外にいろいろな情報源が存在する今の時代にコスパとかタイパとかを考えたらあまり効率のよい行為とは言えないが、読書は情報を得るためだけにあるのではなく、ゆっくりとしたペースで物を考えながら文字を追うという行為もなかなか楽しい「娯楽」だと思えるのだが…。