書籍,雑誌,新聞だけではなく,映画やドラマのセリフ,テレビやラジオから聞こえてくる言葉,さらには日常生活において耳にする言葉など,私たちのまわりには言葉が溢れている。そこには良くも悪しくも自分の中にとどまり続ける言葉もあるはずで,今年はそのような言葉について自分が感じたことを折に触れて「光のことば 闇のことば」と題して書いてみることにする。
**************************************
第1回は以下の「ことば」である。
彼の活躍を毎日スマホで調べ,動画をお気に入り登録している。それらを繰り返し見ていると,心臓発作の回数が明らかに減り,症状も軽くなっていくのを実感できた。
これは「朝日新聞」の2024年12月30日付「声」欄に投稿された福岡県在住の77歳の主婦の文章である。ここで「彼」と言われているのはLAドジャースの大谷翔平選手のことだ。彼女は野球には興味がなかったのだが,一昨年テレビで偶然WBCを見て大谷の大ファンになったということである。テレビなどで見る限り,大谷翔平はとても聡明な選手で,一部のスポーツ選手が時折口にする「勇気を与えたい」などといった不遜なことを言うのを聞いたことがないが,それでも彼女は大谷の活躍する動画を見ているだけで病気の症状が軽くなったのだと言う。彼女は大谷を応援することで「毎日が笑顔で楽しい一年を過ごせた」と書いている。これは精神が身体にプラスの作用を及ぼす一例だろうが,それは彼女が大谷から勇気を貰ったということではないだろう。私には医学の知識はないが,笑顔でいることで「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが分泌していたのではないだろうか。私は彼女よりは若干年下だが,年相応に体の不調を抱えており,中には致命的ではないものの手術が必要になるかもしれない病もあるので,彼女のように笑顔で楽しく過ごすことができればそれも少し和らぐかもしれないとは思う。しかし,考えてみれば私の平凡な生活においても笑顔で楽しい一年を過ごすことはとても難しいことのようにも思うのである。