監督:デヴィッド・フィンチャー

キャスト

ジェシー・アイゼンバーグ(マーク・ザッカーバーグ

アンドリュー・ガーフィールド(エドゥアルド・サベリン)

ジャスティン・ティンバーレイク(ショーン・パーカー)

 

 デヴィッド・フィンチャー監督の映画で,今までに観たことのある作品は,「セブン」,「ファイトクラブ」,「ドラゴン・タトゥーの女」,「ゴーン・ガール」であるが,本作は未鑑賞だった。マーク・ザッカーバーグたちがSNSサイト “Facebook”を創設して成功するまでの話と,その後のマーク・ザッカーバーグに対する訴訟の様子を描いた映画である。デヴィッド・フィンチャーにしては,少し傾向の異なる映画であるが,かなり楽しめた。ただ,登場人物はイヤなヤツばかりだったが…。

   

 冒頭,ハーバード大学の学生マーク・ザッカーバーグは,恋人の女子学生エリカ(ルーニー・マーラ)とバーで話をしているうちに口論になり,フラれてしまう。その腹いせにマークはブログでエリカの悪口を書きまくり,挙げ句の果てにハーバード大学の寮のコンピュータをハッキングして,名簿を盗み取り,女子学生の容姿の格付けサイトを立ち上げるが,2時間で22000ものアクセスが集中する。最低の男だが,このあたりの話は実話ではなさそうである。ただ,こういう話から映画を始めるところに,デヴィッド・フィンチャーのマーク・ザッカーバーグへの視線が窺われて,なかなか興味深いスタートだ。彼のこのプログラミングの才能に目をつけたのが,エリート学生のウィンクルボス兄弟。彼らは双子で,ハーバード大学に在籍している男女のネット上での出会い系サイトを立ち上げようとしていたのだ。マークは彼らの依頼を引き受けるが,彼らの発想をヒントに親友のエドゥアルド・サベリンの協力を得て,ウィンクルボス兄弟に内緒で “The Facebook”を立ち上げるのである。“The Facebook”は流行し,他大学にまでその利用者が拡大する。そして,ついには,サイトを通じてマークに連絡を取ってきたNapsterの設立者ショーン・パーカーの才能に惚れ込み,カリフォルニアにまで進出するのである。マークはショーンの助言に従って“The Facebook”“Facebook”と改称し,大成功を収める。

 映画は現在進行中のマークに対する2つの訴訟と,上に述べた話が時を前後しながら展開される。2つの訴訟の一つは,ウィンクルボス兄弟によって起こされたもので,マークがウィンクルボス兄弟のアイデアを盗んだという知的財産権に関するものである。もう一つは,エドゥアルド・サベリンが起こした訴訟である。マークが西海岸で事業を拡大している時,エドゥアルドはNYでスポンサー探しに奔走している。やがて,“Facebook”が新たな投資会社との契約を成立させ,企業として発展していくなか,NYにいるエドゥアルドは取り残されていく。当初30%であったエドゥアルドの株保有率は,いつの間にか0.03%にまで引き下げられていたのだ。当然,エドゥアルドは激怒し,創業者としての権利を主張して告訴したのである。

 2つの訴訟を切り分けながら,非常に早いテンポで進んでいく映画であるが,話の展開はとてもわかりやすく,デヴィッド・フィンチャーの物語のさばき方に感心した。その意味では,まったく退屈しないで見ることのできる映画だった。ただ,この映画に登場する人物には,誰一人として共感できなかった。もちろん,これは実話に基づいていると言っても,映画である以上,大なり小なりの脚色がなされていることは承知している。しかし,まったくのウソ話ではない以上,マーク・ザッカーバーグやショーン・パーカーはクソ野郎としか思えないのである。

 

 ラスト。駆け出しの女性弁護士がマークに言う。

「マーク,あなたはイヤな奴じゃないわ。そう振る舞っているだけ。」

 いや,イヤな奴でしょ。それも,かなり…。

 

 

(この記事は以前Yahoo!ブログに掲載したレビューに多少の修正を施したものです。)