スーパーから物が無くなり、外国人が姿を消し…メディアが報じない「日本が戦争当事国になった日」に起きること
AERA DIGITAL7/15(水)8:00
スーパーから物が無くなり、外国人が姿を消し…メディアが報じない「日本が戦争当事国になった日」に起きること(AERA DIGITAL)|dメニューニュース(NTTドコモ) 配信より
高市早苗首相が国会で述べたような形で、日本が「台湾有事」に介入し、自衛隊が中国軍との戦闘状態に入ったら何が起きるのか。軍事シミュレーションは数多く語られる一方、私たちの暮らしへの影響はほとんど論じられない。日本が戦争の当事国になった時、国民の暮らしはどう変わるのか。山崎雅弘氏による朝日新書『戦争を甘く見る空気 1930年代と似た道を進む現代日本』から、一部抜粋して紹介する。
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■信念に基づいて「台湾有事は日本の有事」と繰り返してきた高市首相
先に紹介した共同通信の世論調査で、「台湾有事で集団的自衛権を行使する」との高市答弁に「賛成」と答えた国民は、二〇二五年十一月七日の高市首相と質問者の岡田克也(おかだ・かつや)議員(立憲民主党)の国会でのやりとりをニュースなどで聴いて、高市首相の次のような答弁に納得あるいは賛同した人であると考えられます。
「先ほど有事という言葉がございました。それはいろいろな形がありましょう。例えば、台湾を完全に中国、北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか。(略)それが戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます」
高市首相の国会答弁は、安倍政権下で構築された、集団的自衛権とその発動条件である「存立危機事態」の枠組みを土台として、それを台湾問題に当てはめたものでした。
高市首相は、首相になる前から「台湾有事は日本の有事」という、あたかも中国軍が台湾に侵攻すれば日本が侵攻されたと見なすかのような発言を繰り返しており、二〇二一年十二月二日にはSNSのツイッター(現X)に、次のような投稿をしていました。
「台湾有事は日本の有事で、日米同盟の有事。安倍元総理は、当たり前のことを仰いました。今日の昼間に、私の講演でも、引用させて頂きました」
けれども、高市首相の国会での答弁内容を注意深く読むと、そこには明らかに、安倍政権時代とは異なる論理が述べられていたことに気づきます。
安倍政権下で成立した集団的自衛権の行使を認める条件は、日本の存立が脅かされる状況で「米軍が攻撃された場合、その米軍を助けるために自衛隊が出動する」というものでした。ところが、高市首相は国会で、この前提を省いたような言い方で、あたかも「中国が台湾で軍事行動を起こせば、『存立危機事態』を宣言して自衛隊を出動させうる」と、自らの強い信念であるかのように述べていました。
また、安倍晋三が「台湾有事は日本の有事」という言葉を口にし始めたのは、首相を辞任し一国会議員の立場になってからで、首相時代の発言ではありません。
しかし、アメリカ政府もアメリカ軍も、中国軍が台湾統一を目指して武力侵攻した場合に「必ず武力介入して台湾を助けに行く」と表明したことは、一度もありません。
安倍・菅・岸田・石破の各政権と同様、アメリカ政府も台湾問題では中国政府の立場を「理解し、尊重する」という姿勢をとっており、戦闘機などのアメリカ製兵器を台湾に輸出することはあっても、アメリカと台湾は軍事的な同盟関係ではありません。
台湾問題に関するアメリカの基本姿勢は、中国軍が台湾侵攻を行った場合に米軍がどのような対応をとるかは「明言しない」、つまり「曖昧にしておく」というものでした。
つまり、中国軍が台湾侵攻を行った場合に米軍が軍事介入することを前提として語った高市首相の「台湾有事発言」は、アメリカ政府と米軍にとっても迷惑な話でした。
実際、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、発言から一八日後の十一月二十五日に高市首相と行った電話会談で「台湾についての発言を和らげるよう」勧め、「中国が反発を強める中で、事態を沈静化させていかなければならない」との認識を示したと、複数のメディア(十一月二十七日付朝日新聞、十一月二十六日付米ウォールストリート・ジャーナル)が「政府関係者の話」として伝えました。
■スーパーから物が無くなり、外国人が姿を消し、経済活動が停止
高市首相の国会での「台湾有事発言」と、中国政府が要求した発言撤回を頑なに拒絶する態度について、日本国内では「中国政府に対して毅然とした姿勢で立ち向かっている」との理由で、肯定的に評価する声が少なくありません。
しかし、我々はここで、第一章で見てきた、一九三七年七月以降の日本社会に広がっていた「空気」を思い出すべきではないかと思います。
威勢のいい強硬姿勢で一歩も譲らず「中国政府に対して毅然とした姿勢で立ち向かう」ことが、本当に「日本国民にとってプラス」になるのでしょうか?
そして、実際に高市首相が国会で述べたような形で、日本が「台湾有事に介入」して、自衛隊が中国軍と戦闘状態に入った時、日本社会でどんなことが起きるのでしょうか?
週刊誌などのメディアは、尖閣諸島や台湾近海で紛争が発生し、自衛隊と中国軍が戦闘状態に入った場合の「シミュレーション」、つまり展開予想の記事を時々公開します。双方の戦闘機やミサイル、艦艇の戦力比較に基づいて「こう戦えば結果はこうなる」と予測する、軍事面での各種情報に基づいた分析が、記事の中では展開されます。
けれども、そうした記事はいずれも軍事的な話だけで完結しており、日中間の軍事衝突の発生が日本の一般国民の暮らしにどんな変化をもたらしうるかという「非軍事のシミュレーション」を取り上げるメディアの記事は、まず目にすることがありません。
もし明日、自衛隊と中国軍が戦闘状態に入ったら、我々の暮らしはどう変わるのか。
まず最初に起きると考えられるのは、市民レベルでの食糧と生活物資の大量購入です。
米や野菜、飲料水、保存食品、電池、石鹼、ティッシュ、トイレットペーパーなどの品がスーパーやコンビニの棚から消えるか、それらの価格が今以上に暴騰するでしょう。
日本国民の生活圏がすぐに戦争の被害を受けることがなくても、日本が戦時下となって船舶による貿易がストップすれば、食糧や資源、衣類、石油、ガスなど多くの物や資源を輸入に頼る日本国内の社会システムは、土台から大きく揺らぐと考えられます。
また、現在日本社会のあちこちで働く外国人が、紛争発生と共に一斉に帰国した場合、農業や漁業、中小の工場、コンビニなど、多くの分野で深刻な人員不足が発生します。
そうなれば、日本国内の経済活動は瞬く間に停滞し、やがて停止に追い込まれる可能性があります。日本国内で操業する工場でも、材料や部品を中国や台湾から輸入している場合が多く、それらの供給が途絶えれば、大規模な工場でも休業を強いられます。
また、日本国内には、自衛隊と民間が共用する空港があちこちにありますが、日中の軍事紛争が激化して戦域が拡大した場合、これらの空港が攻撃の標的となる可能性があります。日本各地にある自衛隊の基地や、ミサイルなどを貯蔵する弾薬庫周辺、船舶の修理に使用できる港湾なども同様です。二〇二二年に始まったロシア軍のウクライナ侵攻では、ウクライナ国内にあるチョルノービリ(旧名チェルノブイリ)とザポリージャの原子力発電所が、ロシア軍に占領されたり攻撃の標的となりました。
紛争が戦争へと拡大すれば、ウクライナと同様、市民が暮らす都市や町がミサイルや無人兵器(ドローン)に攻撃される可能性も想定しなくてはなりません。
共同通信の世論調査で、集団的自衛権つまり「自衛隊が台湾周辺で中国軍と戦うこと」に賛成した人は、こうした可能性をどの程度想像した上で回答したのでしょうか。
(山崎雅弘『戦争を甘く見る空気 1930年代と似た道を進む現代日本』から一部抜粋)















