「辞めなければ党もたぬ」石破首相の責任論強まる 2度の大敗で求心力低下
配信より
自民党開票センターで報道各社の取材に応じる石破茂首相=20日午後、党本部(春名中撮影)
自民党は20日投開票の参院選で昨年10月の衆院選に続き大幅に議席を減らす見通しだ。
支持層が一部重なる参政党などの新興勢力の伸長を許し、「保守政党」の看板は失われつつある。
石破茂首相(党総裁)は20日夜、国政選挙で2度の大敗を喫してもなお続投に意欲を示したが、
党内の求心力低下に歯止めがかからない。
解党的出直しへ首相の責任論が強まるのは必至だ。
【写真】「思ったよりさらに厳しい…」自民党本部、消沈した空気
■石破首相に笑顔なし
公認候補者全員の名前を記したボードが設置された東京・永田町の自民党本部4階。
20日午後10時前に会場入りし、当選確実になった候補者名に花を付ける首相に笑顔はなかった。
NHK番組では「この厳しい情勢を謙虚に真摯に受け止めなければいけない」と語った。
6月の東京都議選で過去最低議席に終わった自民は戦略の練り直しを迫られたが、
逆風をはね返す手立てを見いだせないまま参院選に突入した。
都議選の惨敗は物価高対策などへの不満に加え、
首相の選択的夫婦別姓制度を巡る対応などに嫌気がさした岩盤保守層の支持離れが要因の一つとされる。
その傾向は参院選でさらに強まった。
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)による中盤の情勢調査では、
自民は比例代表で6割超しか支持層を固められず、
約7%が保守層を意識した政策を打ち出す参政に流れていた。
ある候補者は「党内の左派と外部の保守に攻め込まれている。異様な逆風だ」と漏らした。
争点となった外国人問題への対応では、「日本人ファースト」を掲げる参政などの主張に埋没した。
物価高対策でも自民は消費税減税を早々と封印し、現金給付を中心に訴えたものの、
減税を前面に押し出す野党に劣勢だった。
14日には、首相や森山裕幹事長ら幹部が集まり、選挙戦終盤の戦略を協議したが、
多くの選挙区が厳しい情勢で、テコ入れを図る「重点選挙区」すら絞り込めなかった。
■党内から恨み節も
党内からは「首相や幹部が全国を回れば回るだけ票が減る」との恨み節も聞かれた。
自民中堅は「首相への批判がそのまま自民に向いた」と語る。
大敗を受け、首相の責任論が噴出するのは避けられない。
保守系議員を中心に党内に蓄積する不満が「石破降ろし」につながるかが今後の焦点となる。
党内唯一の派閥となった麻生派を率いる麻生太郎最高顧問は20日夜、
都内の派閥事務所に鈴木俊一総務会長ら側近を集め、今後の対応を協議した。
旧安倍派などの保守系議員が一枚岩となって、首相に退陣を迫る勢力になるかどうかは見通せない。
麻生氏や旧岸田派議員に影響力を持つ岸田文雄前首相らの動向が政局のカギを握る。
政権運営が一層厳しくなる中、首相は連立を含めた野党との連携を模索することになる。
仮に外交安全保障政策などが異なる立憲民主党との連立に動けば、党内から強い反発も予想される。
昨年の党総裁選で首相に敗れた高市早苗前経済安全保障担当相は選挙戦最終盤の18日、
奈良県で開かれた応援演説で
「私なりに腹をくくった。もう一回、自民党の背骨を入れ直す。そのために戦う」と、
次期総裁選への意欲ととれる発言を口にした。
これには党内から「選挙期間中に言うことではない」と批判的な声も上がる。
現時点で党の立て直しに向けて挙党態勢を敷くことができる次期総裁候補は見当たらないが、閣僚経験者は断言する。
「首相が辞めなければ党は持たない」
(小沢慶太)
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