首相の外遊で利用される政府専用機(写真:ロイター/アフロ)

 

今年もゴールデンウィーク(GW)の時期を迎えています。この季節になると、毎年のように話題になるのが、大臣たちの「外遊」、つまり海外出張です。

 

特に今年は、閣僚のアメリカやヨーロッパ、東南アジアなどへの出張計画が報じられると、

 

野党から「いま行く必要があるのか」「外遊が多すぎないか」といった批判の声が上がっています。

 

なぜこの時期に大臣たちは外遊に出るのでしょうか。そして、なぜ野党はそれに反対するのでしょうか。

 

また、国会の了解なく外遊することはできるのでしょうか。今回は、この問題について整理してみたいと思います。

今年の外遊は閣僚14人

今年のゴールデンウィークでは、閣僚14人が外遊に行く予定とされています。

 

石破内閣の閣僚は、計19人ですから、実に約4分の3の閣僚が日本を不在にすることになり、

 

危機管理などの問題を指摘する声が上がっています。

 

実際に立憲民主党は、25日の参議院議院運営委員会理事会で、

 

岩屋外務大臣、鈴木法務大臣、阿部文部科学大臣の外遊は不急だとして反対しました。

なぜゴールデンウィークに外遊が多いのか

大臣の外遊がゴールデンウィークに集中する最大の理由は、国会の日程にあります。日本の通常国会(常会)は、毎年1月から6月まで開かれており、この期間は、ほぼ毎日のように国会での審議が行われ、大臣たちは答弁のために出席しなければなりません。したがって、平日に海外へ出張することは難しいのが現実です。

 

そのため、日本固有の休日制度である祝日や連休の時期を利用して外交日程を組むことが慣例となっています。中でもゴールデンウィークはまとまった日数が確保できる貴重なタイミングです。さらに、海外の関係国でもこの時期に国際会議が開かれたり、閣僚級の協議が行われたりすることが多く、日程が組みやすい事情もあります。外交は相手国との調整が必要で、日本側の都合だけでは決められない部分が大きいといえます。

なぜ野党は反対するのか

一方で、野党がこうした外遊に対して疑問を投げかけるのは、国会での審議を重視しているからです。

 

特に、重要法案の審議中や、政府の不祥事に関する集中審議が予定されている時期に

 

閣僚が不在となると、「説明責任を放棄しているのではないか」と批判の的になります。

 

また、ゴールデンウィーク中は国会審議こそないものの、災害発生などの危機管理上のリスク管理の観点や、経費節約の観点から反対することもあります。

 

更に、国内で物価高騰への対応が求められていたり、災害が発生していたりする場合には、「いま行くべきではない」という声が強まります。

 

仮に出張の必要性があったとしても、国民への説明が不足すれば、「国民不在の政治」と受け取られるリスクがあるのです。

 

実際に笠国対委員長(立憲)は「トランプ米政権の関税問題を含め動きがある。緊張感を持って臨むべきだ。本当にこの時期に行かないといけないのか」と述べています。

国会の承認がなくても外遊できるのか ― 根拠法と制度

では、大臣が海外に出張する際には、国会の承認が必要なのでしょうか。答えは「必要ない」ということになります。

 

日本の法律では、大臣の海外出張について国会の許可を必要とする規定はありません。

 

憲法や国会法、内閣法にもそのような条文はなく、各省庁ごとに

 

内部規則として出張手続きを定めています。

 

出張にあたっては、基本的に首相の了解を得ることで実施されます。

 

もっとも、国会会期中に大臣が不在となる場合には、

 

慣例として衆参両院の議院運営委員会(議運)で報告を行い、了解を得ることが多いです。

 

しかし、これはあくまで「慣行」であり、法的な拘束力はありません。

 

もし議運で了承されなかったとしても、法的には出張を強行することが可能です。

 

実際に、岩屋外務大臣、鈴木法務大臣、阿部文部科学大臣の外遊も、予定通り行われる見込みです。

 

このように、大臣の外遊は内閣の裁量に委ねられており、

 

国会の承認が制度上は求められていないという仕組みになっています。

「外遊」という言葉の語源と意味

ところで、「外遊」という言葉には独特の響きがあります。「遊」という字が「遊び」を連想させるため、外交の真剣な仕事にふさわしくない印象を与える場合もあります。しかし、本来の意味はそのようなものではありません。

 

「外遊」という言葉は中国語由来とされ、「遊」には「巡行する」「歩き回る」といった意味があります。古代中国では、皇帝が地方を視察することを「遊」と表現していました。この影響を受け、日本でも「外国を巡る」「視察する」という意味で「外遊」という言葉が使われるようになったのです。政治界隈でも「遊説」という言葉が使われますが、これも「地方遊説」のように、外に出て演説をすることを指すものであり、当然、遊んでいるわけではありません。

 

したがって、本来の「外遊」は「外交活動の一環として外国を訪問する」という意味を持っています。ところが、国内の政治状況が緊迫している中で外遊に出ると、「遊び歩いているのではないか」という批判的なニュアンスで語られることが少なくありません。ましてやゴールデンウィークという時期がミスリードして、政治家が海外旅行に行っているかのような文脈で語られることもあり、この語感が、毎年繰り返される論争をより激しくしているともいえます。

外交と国会、どちらが優先されるべきか

結局のところ、この問題は「外交と国会審議のどちらを優先するべきか」という問いにつながります。外交は相手国があるため、自国の都合だけで日程を決めることはできません。しかし、国会審議は主権者である国民への説明の場であり、これをおろそかにすれば政治不信を招きます。

 

必要なのは、外遊の目的や必要性をしっかり説明し、国民の理解を得る努力を怠らないことです。相手国の都合で避けられない出張であっても、その背景を丁寧に説明すれば、不要な批判を避けることができるでしょう。

 

大臣の外遊をめぐる議論は、外交と民主主義のバランスをどう取るかという日本の政治のあり方そのものを映し出しています。この問題を単なる「スケジュール調整」ではなく、もっと大きな視点で考える必要があるのではないでしょうか。

大濱崎卓真

選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2021年度経営情報学会代議員。日本選挙学会会員。行政書士。

 

私のコメント :  令和7年4月27日、各党の意見集約の著しく、その異なるところ、参議院選挙に向け、日本国民の目は、厳しいものとなるかどうかは、参議院選挙の結果を見てみないと判断できないし、わからない。