東京六大学野球春のリーグ戦開幕日にお披露目となった記念碑(筆者撮影)

東京六大学の応援団は7~8割は女子が占める

今年、東京六大学野球連盟は100周年を迎える。

 

昨日、4月12日の春のリーグ戦開幕日には、「東京六大学野球発祥の地」と刻まれた記念碑の除幕式が行われた。

 

この記念碑は、来年生誕100年を迎える明治神宮野球場の正面横に建てられている。

 

東京六大学野球(以下、東京六大学)になくてはならないのが、

 

毎試合展開される各校の洗練された応援だ。「東京六大学と応援はセット」という声もよく聞かれる。

 

各校の応援団が所属する東京六大学応援団連盟は1947年創設。

 

(明治大学、法政大学、立教大学は応援団、早稲田大学、東京大学は応援部(5校の順番は創設年順)、

 

慶應義塾大学は應援指導部と名称が異なるが、この稿では「応援団」とする)。

 

東京六大学応援団連盟は今年が100周年ではないが、

 

各校の応援団は、東京六大学発足当時から野球応援を繰り広げていた。

 

応援団というと、一般的には学ラン姿を思い浮かべる人が多いだろう。


東京六大学の応援団は基本的に三部から成る。

 

学ランを身にまとい、きびきびした所作や大きな声で応援をリードする「リーダー」、

 

心湧きたつ音色で球場を盛り上げる「吹奏楽」、

 

そして、華やかな舞いで彩を与える「チア」の3つである。

 

ただ、「リーダー文化」に厳しい目が向けられがちの時代の流れもあり、

 

近年は東京六大学もリーダー不足に悩んでいる学校が多い。

 

一方で「吹奏楽」は女子部員が多く、「チア」も女子が主体。

 

かつては「男臭さの象徴」とも言われていた応援団だが、

 

実態は(東京六大学では)その7割か8割は女子部員なのだ。

 

こうしたなか、増えてきているのが、女子のリーダーだ。

 

筆者は2022年に明大応援団初の女子のリーダー長(応援指導班班長)を、

 

2023年には立大応援団のリーダー部に所属している3人の女子(いずれも当時2年)を取材したことがある。

 

※2022年 明大応援団取材

学ラン姿の「リーダー長」が女性であってもいい。明治大学応援団は性別よりも人としての中身を尊重(上原伸一) - エキスパート - Yahoo!ニュース

 

※2023年 立大応援団取材

学ランを選んだ女子リーダーともフラットに向き合う。1931年創設の立教大学体育会応援団はいま(上原伸一) - エキスパート - Yahoo!ニュース

 

それだけ「女子のリーダー」が稀有だったわけだが、現在(今年2月現在)は明大に3人、立大に5人、東大には4人の女子リーダーがいる(3校の順番は創設年順)。つまり、女子のリーダーがさほど珍しくなくなっているのだ。

 

こうした現象は高校野球の応援団でも現れているようだ。

 

東京六大学で唯一、女子のリーダーを採用した実績がない法大応援団も(今年2月現在)、検討を考えているという。

 

立大には初の女子応援団長が誕生

 

特筆すべきは立大である。今年度、立大応援団は、創設94年目で初めて、

 

林田萌恵子さん(4年、立教女学院)がリーダー部の女子として団長を務める。

 

女子のリーダーが応援団のトップになるのは、東京六大学応援団連盟としても初となる。

 

またリーダー部では、これも立大応援団としては初の女子のリーダー部長が誕生。

 

中村仁香さん(4年、立教女学院)は4月12日の慶大との開幕戦でも、

 

応援団に用意されているリーダー台と呼ばれるステージ(幅約6.6メートル、奥行き約2メートル)で、

 

その声を高らかに神宮の空に響かせていた。

立大の開幕試合では立大初の女子応援団長と初の女子リーダー部長が中心となって応援席を盛り上げた(筆者撮影)
立大の開幕試合では立大初の女子応援団長と初の女子リーダー部長が中心となって応援席を盛り上げた(筆者撮影)

 

林田さんと中村さんを取材したのは、ともに2年生になったばかりの頃。

 

あれから2人は応援団特有の鍛錬も乗り越え、新たな道を切り拓いたパイオニアになった。

 

女子が進出したことが垣根を低くしたのか、

 

リーダー部に女子がいる学校は、男子のリーダーも増え始めているという。

 

男子が「女子の世界」に進出している例もある。

 

慶大應援指導部・代表の枝葉二葉さん(4年、桐朋)は、同部にリーダー部がないことから、所属はチアリーディング部。

 

これまでの“チアは女子”という固定観念にとらわれることなく、

 

「応援は様々な垣根を越えてみんなで作り上げるもの」と、女子部員とともに練習を行っている。

 

東京六大学は今春のリーグ戦より、次なる100年に向けて、

 

学生野球では初の試みとなるビデオ判定によるリプレー検証を導入。

 

さらには来年からDH制(指名打者制)を導入する。

 

伴走者である東京六大学の応援団も、時代の変化を見据えている。

 

2024年のレポートでは日本の「ジェンダー・ギャップ指数」は、世界146カ国・地域中118位だったが、

 

かつての「男臭さの象徴」とされた応援団の世界は大きく変わろうとしている。

 

 

上原伸一

ノンフィクションライター

Shinichi Uehara/1962年東京生まれ。外資系スポーツメーカーに8年間在籍後、PR代理店を経て、2001年からフリーランスのライターになる。これまで活動のメインとする野球では、アマチュア野球のカテゴリーを幅広く取材。現在はベースボール・マガジン社の「週刊ベースボール」、「大学野球」、「高校野球マガジン」などの専門誌の他、Webメディアでは朝日新聞「4years.」、「NumberWeb」、「スポーツナビ」、「現代ビジネス」などに寄稿している。「Yahoo!ニュース エキスパート」でMVA賞を2度受賞。

 

私のコメント :  令和7年4月13日、今年、東京六大学野球連盟は100周年を迎える。昨日、4月12日の春のリーグ戦開幕日には、「東京六大学野球発祥の地」と刻まれた記念碑の除幕式が行われた。この記念碑は、来年生誕100年を迎える明治神宮野球場の正面横に建てられている。