宮城の外国人労働者、2万人迫る 雇用事業所も初の3千超え過去最多

福留庸友

 

宮城の外国人労働者、2万人迫る 雇用事業所も初の3千超え過去最多 [宮城県]:朝日新聞 配信より

 

在留資格別外国人労働者の割合と国籍別外国人労働者の割合
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 宮城労働局は、宮城県内で働く外国人労働者数が昨年10月時点で2万人に迫り、過去最多となったと発表した。外国人労働者を雇用する事業所数も初めて3千事業所を超えて過去最多。コロナ禍を経て、外国人材の存在感が年々高まっている。

 外国人の雇用状況については2007年以降、事業者に届け出を義務づけており、近年は毎年10月末時点の数を各都道府県の労働局と厚生労働省がまとめ、発表している。

 今年の発表によると、県内の外国人労働者数は前年比で2968人(17.9%)増の1万9554人だった。14年10月末時点の外国人労働者数は5272人で、10年で4倍近く増加している。

 雇用する事業所数は396事業所(13.8%)増の3268事業所。外国人労働者数、事業所数ともに、届け出が始まって以来過去最多となった。全国でもそれぞれ230万人と34万2千事業所を超え、いずれも過去最多だった。

 県内の国籍別ではベトナムが最も多く、4873人で4分の1を占める。ネパールの3470人、中国(香港、マカオを含む)の2215人、インドネシアの2206人と続く。

 前年比の増加率トップ3は、73人から121人になったブラジルの65・8%増、次いで680人増え44.6%増のインドネシア、448人増え、1508人となり、42.3%増のミャンマーと続く。県が迎え入れに力を入れているインドネシア人の大幅な増加は、3年連続で続いている。

 一方、在留資格別では留学生のアルバイトが大半の「資格外活動」が30・9%を占めてトップ。2番目に多い28・5%の「技能実習」と合わせると、県全体の6割に上る。特定技能や研究、教育、国際業務といった高い技術力が必要とされる「専門的・技術的分野の在留資格」は24・6%だった。

 外国人労働者を雇用する事業所の規模を見ると、6割が30人未満と小規模で、100人未満が約8割に上る。産業別では「卸売業、小売業」が19・5%と最も多く、次いで「宿泊業、飲食サービス業」が16.7%、さらに「製造業」14.6%と続いた。

 宮城労働局は県内の状況について、全国的な傾向と同様に「コロナ後の水際対策の段階的な緩和と国内の人手不足対策で、外国人労働者の受け入れが加速している」と指摘。「県を挙げての受け入れ拡充の取り組みもあり、今後も増加が続くと考える」とした。

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 「皆さんのことを家族だと思っています。国を離れ不安かと思いますが、宮城県は何かあった時、しっかりとお世話させていただく」

 9日、仙台市のホテル。インドネシア、ベトナム、ミャンマーから技能実習と特定技能の在留資格でやって来た274人が参加した県主催のパーティーで、村井嘉浩知事がそうあいさつした。

 「みやぎThanks Party」と銘打ち、今年で3年連続の開催だ。県内で働く外国人材に感謝を伝え、職場や出身国を超えて交流を深めてもらおうと企画。日曜にもかかわらず出席した知事は破顔し、声をかけたり、記念撮影に応じたりした。県を挙げたバックアップを約束し、アピールした。

 伝統の仙台すずめ踊りが会場を盛り上げ、食事はイスラム教の教えに沿って食べることが許される「ハラルフード」も振る舞われた。最後には景品付きのビンゴゲームもあった。

 7年以上日本で働くインドネシア出身のデディ・ウィヤントロさん(33)は「このようなパーティーまで開いてくれるのは他(県)では聞いたことがない。職場の人も優しくサポートしてくれる」とにっこり。

 介護職員として来日3年目のリアー・アマリア・ラムリさん(28)は、職場に礼拝のスペースを設けてもらったという。「働きやすい。宮城は寒く今は円安だけど(働く場所として)とてもおすすめできる」と話した。

 県が外国人労働者の「おもてなし」に力を入れる背景には、誘致に取り組む他の都道府県との競争の激化がある。

 県の委託でパーティー運営を担った東洋ワークの担当者は「時給の高さや休日に遊べる場所の多さなどは、首都圏には対抗できない。宮城を選んでもらうためには、サポートが手厚いといった別の魅力を押し出すことが欠かせない」。県が土葬墓地の検討に乗り出したのも、他地域にはない「サポート」を示し、宮城の手厚さを示すシンボルにする狙いがうかがえる。

 外国人労働者をめぐっては、他の先進国もライバルだ。外国人材の獲得の現場で働く関係者は「出稼ぎ先として、働き方改革で残業しづらくなった日本よりも『きつくてもガンガン稼げる』と韓国人気が高くなっている国もある。『選ばれる国』、その先の『選ばれる県』になる必要があり、競争は激しくなるばかり」と明かす。

 それゆえ、知事は冒頭のあいさつで、参加者にこんなお願いもした。「皆さんは自分の国のお友達とSNSでつながっていると思います。ぜひ『宮城はいいよ。私、楽しいよ。宮城へおいで』と子どもたちやご家族の方にお伝えいただきたい」