川内原発 運転差し止め訴訟 原告訴え退ける判決 受け止めは
川内原発 運転差し止め訴訟 原告訴え退ける判決 受け止めは|NHK 鹿児島県のニュース 配信より
鹿児島県にある川内原子力発電所の1号機と2号機について、地元の住民など3000人余りが運転の差し止めなどを求めた裁判で、鹿児島地方裁判所は「具体的危険性があるとは認められない」として原告の訴えを退ける判決を言い渡しました。
鹿児島県にある川内原子力発電所の1号機と2号機について、地元の住民などは13年前、九州電力と国に運転の差し止めなどを求める訴えを起こしました。
長期に及んだ審理で原告の数は3000人余りまで増え、住民側は、「原発の周辺には過去に巨大な噴火を起こした5つのカルデラがあり、破局的噴火が起きる可能性を無視できない」などと主張していました。
21日の判決で鹿児島地方裁判所の窪田俊秀裁判長は火山噴火の想定については「九州電力の調査などで原発の運用期間の破局的噴火の可能性は十分に小さいと評価されていて、原発の審査で噴火のリスクを評価する時に使う原子力規制委員会の『火山ガイド』とも整合している」などと指摘しました。
また、地震に対する評価については「原発周辺で将来起こりうる最大規模の地震の揺れを示す『基準地震動』は、福島第一原発の事故のあとに作られた新しい規制基準などに沿うもので、九州電力の耐震安全性評価に不合理な点はない」などとしました。
その上で、川内原発の1、2号機について「具体的危険性があるとは認められない」として原告の訴えを退けました。
川内原発の1、2号機は2015年に再稼働し、おととし(2023)には、いずれも20年の運転延長が認可される中、裁判所の判断が注目されていました。
【鹿児島地裁】
鹿児島地方裁判所では多くの人が傍聴券を求めて抽せんに参加しました。
裁判所によりますと一般の傍聴席47席に対して154人が並び、倍率は3.3倍でした。
判決の言い渡しで窪田裁判長は、結論にあたる「主文」を述べる前に、判決の理由をまとめた「骨子」を争点ごとにわけて説明しました。
窪田裁判長が「骨子」を述べる中、傍聴席からは時折、小さなため息が聞こえました。
また、「主文」が言い渡され閉廷したあとには、判決への不満を叫ぶ人もいました。
【原告団の記者会見 “残念” “許容できない” 控訴する方針】
裁判のあと原告や原告の代理人を務める弁護士が、鹿児島市内で記者会見を開きました。
原告団の森永明子団長は「画期的な判決が鹿児島から出せたらいいと思ったが残念だった。福島の原発事故の現実から目をそらさないで欲しい。大変なことが起こる前に止めるという決断をしないといけないと思う」と話していました。
また森雅美弁護士は「断じて許容できない判決だ。原告が危険だということを立証しないかぎり、安全と言い切っている。福島で原発事故が起きて原子力規制委員会をつくり、事故が起きてはいけないと反省したはずなのに元に戻ってしまった」と述べました。
また、大毛裕貴弁護士は「結論ありきの判断だ。火山学者の危険性の指摘や九州電力の設置変更許可申請にある火山学の問題点について触れず原子力規制委員会の審査を通ってるからいいという火山学を踏まえていない最低の判決だと思う」と述べました。
原告の代理人を務める弁護士によりますと、控訴する方針だということです。
【九州電力コメント “当社の主張が認められ、安全確保に万全を期す”】
今回の判決について九州電力は、「川内原子力発電所において原告が主張するような重大な事故が発生する具体的危険性は無いとの当社のこれまでの主張が裁判所に認められたものであると考えております」とコメントしています。
そのうえで、「今後とも、更なる安全性・信頼性向上への取り組みを自主的かつ継続的に進め、原子力発電所の安全確保に万全を期してまいります」としています。
【鹿児島県 塩田知事 “引き続き安全に万全を期してほしい”】
今回の判決を受けて、塩田知事が報道陣の取材に応じ、判決文をすべては読んではいないとした上で、「火山や地震への具体的な危険性がないという趣旨の判決が出されたと聞いている。九州電力には引き続き安全に万全を期してほしいし、規制委員会にも住民の安心、安全の確保のための規制の運用をお願いしたい」と話していました。
そのうえで、「原発が存在するリスクは立地県として常に念頭に置きながら、県民のみなさんの暮らしと安全を守る観点から訓練についても対応していく必要がある」などとして、引き続き、県として不測の事態への備えや不安の払拭にむけた取り組みを続けていく必要があるとの認識を示しました。
【薩摩川内市 田中良二市長】
判決を受けて、川内原子力発電所が立地する鹿児島県薩摩川内市の田中良二市長は「判決の内容について詳細に把握しておらず、コメントは差し控える。九州電力に対しては引き続き、川内原子力発電所の安全な運転管理の徹底と、市民の皆様への情報公開と丁寧な説明をお願いしたい」とコメントしています。
【国の原子力規制委員会】
判決を受けて国の原子力規制委員会は、「東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえて策定された新規制基準への適合性審査を厳格に進めていくことにより、適切な規制を行って参りたい」とコメントしています。
【京都大学複合原子力科学研究所 釜江克宏特任教授】
鹿児島県にある川内原子力発電所について住民などが運転の差し止めなどを求めた裁判で、鹿児島地方裁判所が原告の訴えを退けた判決について地震工学が専門で、京都大学複合原子力科学研究所の釜江克宏特任教授は、「争点が多岐にわたり長期の裁判だったが、熊本地震など、新たな知見も踏まえた適切な判断だと思う」と述べました。
そのうえで、「原発にはリスクが伴い、大きな事故につながる可能性はゼロではない。福島第一原発の事故を1つの戒めとして危機感を持ちながら管理することが大事で、九州電力には将来にわたり、ゼロに近づける努力をしてもらいたい。自然現象はいつどこでどのくらいのものが起きるかわからないが、『想定外』とは言わず、より安全性を向上させる取り組みを続けることを強く望みたい」と指摘していました。
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○ 九州原発ゼロへ、48の視点―玄海・川内原発の廃炉をめざして―
白鳥 務,東島 浩幸,向原 祥隆,橋爪 健郎,深江 守,藤田 祐幸,豊島 耕一,戸田 清,中野 洋一,杉原 洋,木村 朗,木村 朗/南方新社
○ 川内原発を巨大地震が襲う
立石 雅昭,川内原発活断層研究会/南方新社
○ 原発災害と地元コミュニティ―福島県川内村奮闘記 (コミュニティ政策叢書)
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○ 原発訴訟が社会を変える (集英社新書)
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