神奈川 厚木基地 周辺住民による5度目の集団訴訟 きょう判決へ
神奈川 厚木基地 周辺住民による5度目の集団訴訟 きょう判決へ | NHK | 基地問題 配信より
神奈川県にある厚木基地の周辺住民が航空機の騒音被害を訴えた5度目となる集団訴訟の判決が、20日、横浜地方裁判所で言い渡されます。厚木基地からは6年前にアメリカ軍の一部の部隊が移転していて、騒音被害について、裁判所がどのような判断を示すか注目されます。
神奈川県の厚木基地の騒音をめぐっては、2016年に最高裁判所が4度目の集団訴訟で被害を認定して国に住民への賠償を命じた一方、自衛隊機やアメリカ軍機の飛行の差し止めは認めないとする判断を示しています。
基地周辺の8つの市の住民およそ8700人はこれを不服として5度目の裁判を起こし、夜から朝にかけての航空機の飛行差し止めや、過去の騒音被害に対する賠償、さらに、将来にわたる被害についても飛行が差し止められるまで原告1人当たり1か月ごとに4万円の賠償を求めています。

これに対し国側は、航空機の飛行は防衛のためで公共性が高く、周辺の住宅には防音工事など対策を行っているなどとして訴えを退けるよう求めています。
また、厚木基地では2018年に在日アメリカ海軍の空母艦載機が山口県の岩国基地へ移転していますが、住民側は「騒音被害は続いている」などと訴える一方、国側は「騒音は著しく低減した」などと主張しています。
20日の判決では、8年前の最高裁の判断や米軍移転後の騒音の状況を踏まえたうえで裁判所がどのような判断を示すか注目されます。
騒音被害訴える集団訴訟 これまでの経緯
厚木基地の周辺の住民が騒音被害を訴えて集団訴訟を初めて起こしたのは、半世紀近く前の1976年で、これまで行われた4度の訴訟ではいずれも騒音の違法性が認められ、国に対して損害賠償を命じる判決が確定しています。
このうち前回、4度目の訴訟では、2014年に1審の横浜地方裁判所が、自衛隊機について午後10時から午前6時までの間飛行を差し止める判決を全国で初めて言い渡しました。
一方、アメリカ軍機の飛行差し止めの訴えについては、日本の法律では差し止めの対象にはならないなどとして退けました。
2審の東京高等裁判所も翌年、1審に続いて、自衛隊機の飛行の差し止めのほか、騒音被害については将来分も賠償するよう命じました。
しかし、最高裁判所は2016年の判決で「自衛隊機の運航には高度の公共性や公益性があり、住民の被害は軽視できないものの、飛行の自主規制や防音工事への助成が行われていることなどを総合的に考慮すれば、自衛隊機の運航が著しく妥当性を欠くと認めるのは困難だ」として、飛行の差し止めを認めませんでした。
また、賠償についても将来分までは認められないという判断を示し、認定された賠償は、過去分の被害に限られました。
この判決を不服として厚木基地周辺の住民およそ8700人は、2017年に5度目となる集団訴訟を起こしていました。
厚木基地の現状は
厚木基地は、神奈川県綾瀬市と大和市にまたがり、海上自衛隊とアメリカ海軍が共同で使用する基地です。
市街地に位置し、およそ2400メートルの滑走路があり、海上自衛隊は厚木基地にP1哨戒機およそ20機、それに輸送機やヘリコプターなどを配備しています。
一方、アメリカ海軍はヘリコプター部隊などを配備しているほか、神奈川県によりますとオスプレイなどほかの基地に所属する機体が訓練や整備のために基地を利用していることが確認されています。
県によりますと、騒音問題はアメリカ海軍のジェット機が基地に飛来するようになった昭和30年代から指摘されるようになり、アメリカ海軍が厚木基地を空母艦載機の拠点として使用し、飛行場を空母の甲板に見立てて離着陸の訓練が繰り返し行われた際には激しい騒音被害が発生しました。
日米両政府の合意で空母艦載機は山口県の岩国基地へ移転させることが決まり、2018年にFA18戦闘攻撃機などおよそ60機の移転が完了しました。