なぜ京セラは個人向けスマホ事業から撤退? 高耐久スマホ「TORQUE」は今後も継続
榊原 康日経クロステック/日経コンピュータ
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京セラはコンシューマー向けスマートフォン事業から撤退することを
2023年5月16日の中期経営計画説明会で明らかにした。
2023年3月期で新規開発を完了し、2025年3月期に供給・販売を終了する。
今後は法人向け端末の開発や関連サービスの提供などにシフトしていく方針だ。
調査会社のMM総研によると、2022年度通期の国内携帯電話総出荷台数に占める
京セラのシェアは6位の4.7%(151.5万台)。
KDDI(au)の3G(第3世代移動通信システム)サービス終了に伴う買い替え特需があった
2021年度と比べて出荷台数は半減したものの、
シニア向けやキッズ向けの端末などで一定の存在感を示していた。
なぜこのタイミングで撤退を決断したのだろうか。
コンシューマーだけに向けた機種が終息
京セラによると、スマホがここ2~3年で4Gから5Gに切り替わったことで
「1台のスマホを作るために我々が調達しなければならない
部品のコストが4Gに比べて圧倒的にかかるようになった」
(飯野晃執行役員通信機器事業本部長)。
そこへ国内市場の冷え込み、半導体の需給逼迫などによる部材費の高騰、円安などが重なった。
特に部材費の高騰と円安は原価率の一段の上昇につながり、
2022年の逆風は「かなり強烈だった」(同)という。
スマホ市場はただでさえ成熟化とコモディティー化が著しい。
「産業全体として、プロダクトライフサイクルで利益を生み出すのが難しい市場環境になった。
我々が何かの役に立ち、かつ対価を得られるのであれば別だが、
今のコンシューマー向けスマホ市場はそうではない」
(同)。
中でもコンシューマー向けスマホは、世界中にあまたの競合メーカーがいることを踏まえると
「京セラが特段、出張って役立たなければならない市場ではない」(同)との判断に至った。
これに対して法人向けは「京セラだから役に立てることがまだたくさんある」(同)との認識だ。
例えば防水・防じん性、耐衝撃性などに優れた高耐久端末は
警察、救急、建設、運輸などの分野を中心に全世界で累計約1250万台の出荷実績がある。
「タフネススマホ」で知られる「TORQUE(トルク)」も継続する。
飯野執行役員によると「法人顧客に使ってもらっているものは基本的に継続。
TORQUEも法人顧客に長く使ってもらっているので提供を続けたい」という。
高耐久スマホ「TORQUE 5G」
(画像:KDDI)
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フィーチャーフォンの提供も継続する。
実は、カメラなしのフィーチャーフォンは法人向けに安定して売れるヒット商品でもある。
「フィーチャーフォンは世界でも提供できるメーカーが限られている。
法人顧客にはまだまだ愛用してもらっており、がんばって続けたい」(同)とする。
このように個人向けは完全撤退でなく、
「コンシューマーだけに向けた機種が終息」
と表現するほうが実態に近い。