トランプ氏、デンマーク首相に「いやな発言」と グリーンランド売却拒否で

 

トランプ氏、デンマーク首相に「いやな発言」と グリーンランド売却拒否で - BBCニュース

Denmark's Prime Minister Mette Frederiksen (L) and US President Donald Trump

画像提供,GETTY IMAGES

画像説明,ドナルド・トランプ米大統領とデンマークのメテ・フレデリクセン首相

ドナルド・トランプ米大統領は、デンマークのメテ・フレデリクセン首相がグリーンランドの売却を拒否したことについて、「nasty(嫌な、意地悪な)」発言だと批判した。

 

トランプ大統領は先週、グリーンランド買収に関心があると話した。しかし、フレデリクセン首相はこの提案は「馬鹿げている」と一蹴。また、これを受けてトランプ氏がデンマーク訪問を取りやめたことを「残念だ」と話していた。

 

トランプ氏はデンマーク女王マルグレーテ2世の招待で、9月2日からデンマークを訪問する予定だった。

 

トランプ氏は21日、ホワイトハウスで記者団に対し、「馬鹿げていると、そのアイデアは馬鹿げていると言った(フレデリクセン)首相の発言は、いやな発言だったと思う」と話した。

「不適切な発言だと思う。ただ、『いいえ興味はありません』とだけ言えばよかったのに」

 

また、「フレデリクセン首相は僕ではなくアメリカ合衆国に話しているんだ。アメリカに対して、そんな口の聞き方はない。少なくとも僕が率いている間は」と続けた。

 

さらに、ハリー・トルーマン元大統領も以前、グリーンランドの買収をデンマークに持ちかけたと指摘した。

 

トランプ氏はその後、ツイッターでもデンマークへの批判を続けた。

 

「念のために言うと、デンマークは北大西洋条約機構(NATO)への出資に国内総生産(GDP)の1.35%しか払っていない。富裕国なのだから2%は払うべきだ。アメリカが欧州を守っているのに、NATO28カ国中、2%を出資しているのは8カ国だけだ。アメリカはそれよりももっともっと高水準を維持している。私のおかげで、これらの国々は1000億ドルの追加出資を約束したが、こちらが提供する素晴らしい軍事防衛に足る支払いに達していない。残念だ!」

 

トランプ氏は先週、グリーンランド買収に関心があるという報道を認めた。アメリカの領土との交換も視野に入れているかとの質問には、「色んなことが可能だろう」と答えていた。

 

「これは大きな不動産取引だ」

19日には、グリーンランドの小さな村に金色の高層ビルが建つ加工写真とあわせて、「グリーンランドでこんなことはしないと約束する!」という冗談ツイートを投稿していた。

 

デンマークの反応は?

フレデリクセン首相は21日、グリーンランドの売買は不可能だという主張を繰り返した。

 

資源が豊富なグリーンランドの売却は、自治政府のキム・キールセン首相が「はっきりと拒否」しており、「もちろん私もその立場を共有している」と述べた。

 

さらに、トランプ氏のデンマーク訪問は、「デンマークとアメリカの近しい関係を祝う機会」になるはずだったと話した。

 

「今回の件が我々の良好な関係性を変えることはなく、課題に取り組むための対話も続けていく」

また、トランプ氏への招待は「有効なままだ」と話し、「歓迎の準備は進んでいたので」、訪問取りやめは残念だと述べた。

デンマークの政治家からは、批判の声が相次いでいる。

 

デンマークのポピュリスト野党・デンマーク国民党のクリスチャン・トゥールセン・デール党首は、訪問中止は「茶番」だと指摘した。

 

デール氏は「この男は何を考えているんだ? エイプリルフールの冗談にしてもだ」とツイートしている。

 

保守党のラスムス・イヤーロフ議員は、「デンマーク人として(そして保守党員として)これは信じがたい。トランプがデンマークの(自治を持っている)一地域が売り出し中だと思う理由などどこにもないし、みんなが準備して待っている訪問を失礼にも中止した。アメリカのどこかは売り出し中なのか? アラスカ? もっと敬意を見せてほしい」とツイートし、トランプ氏にはデンマークへの敬意が欠けていると批判した。

 

クリスティアン・イエンセン外相は、トランプ大統領の動きは「まったくの混乱」を招いたと指摘した。

なぜグリーンランドに興味を?

トランプ大統領は、石炭や亜鉛、銅、鉄鋼といったグリーンランドの天然資源に興味を持っていると報じられている。

 

しかしグリーンランドは現在、予算の3分の2をデンマーク政府に頼っている。自殺率やアルコール依存症、失業率も高い。

 

欧州と北米をつなぐ位置にあり、戦略的にも重要だという理由から、アメリカは長年この世界最大の島に興味を持っている。冷戦時代から空軍基地やレーダー基地を設置し始め、アメリカ北部における弾道ミサイル早期警戒システムの一端を担っている。

一方、気候変動による新たな北極圏での航路開通で、この地域の氷の溶解が早まっているという批判もある。

また、中国も近年、この地域に興味を持っているとされる。

Greenland map

 

(英語記事 Trump lashes out at 'nasty' Denmark over Greenland

 

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歴史と文化

配信より
 


写真: David Trood 

歴史
今から約4~5,000年前、最初の住民がカナダからチューレ地方へ渡ってきました。


現在のグリーンランド人は9世紀頃にやってきたチューレ文化の系統です。


ほぼ同じ頃、バイキングとして知られるノースマンもグリーンランドへ渡ってきました。


今でも南グリーンランドやヌークの近くには彼らの遺跡があり、観光スポットとなっています。

 

これまで、グリーンランドにはイギリスや北欧からの遠征隊がたびたび入り、1600~1700年代には主にヨーロッパの捕鯨船が生活の糧を求めてやってきました。


捕鯨船は定期的に訪れたものの、デンマーク/ノルウェー系の宣教師ハンス・エゲデが移住するまで永続的なつながりはありませんでした。

 

ハンス・エゲデは1721年、ノースマンを探すために現在のヌーク(グリーンランドの首都)へ来ましたが、見つけることはできませんでした。しかし彼はイヌイットをキリスト教へと改宗させました。


現在、グリーンランド人の多くは福音ルーテル派のキリスト教徒です。

 

1721年から1953年まではデンマークの植民地でした。


1953年におこなわれたデンマークの憲法改正により、植民地支配は終了。グリーンランドはデンマークの郡(日本の県に相当)となりました。

 

1979年には内政の大部分に権限を持つようになり、2009年に再び権限が拡大され、現在は外交と安全保障を除くすべての社会領域を管轄しています。


言い換えるならば、2009年にグリーンランドは公式にデンマーク王国の自治領となったのです。

 

第二次世界大戦以前のグリーンランドは、閉鎖的で生活水準も低い国でした。


1906年に国の南部で牧羊が始まり、1908年には商業的な漁業が開始されました。

 

第二次世界大戦中、グリーンランドはアメリカとイギリスをつなぐ連合国空路のハブとなりました。しかしデンマークがドイツに占領されたため、デンマークとの接触が完全に断たれてしまいました。そこでグリーンランド政府はアメリカに協力を求め、アメリカはグリーンランドの防衛に合意しました。

 

戦後は国の近代化を支持した市民運動が起こり、1950年代には現在の福祉システムの基礎が築かれました。

 

グリーンランドは1985年にEUを脱退し、現在は加盟していません (これまでにEUを脱退した唯一の存在となっています。)


しかし漁業や教育などの分野において、EUとは双方向合意を締結し、緊密な関係を維持しています。



写真: Andre Schoenherr 

文化
音楽、ダンス、演劇、文学はグリーンランドの伝統文化ならびに現代文化の中心です。
人口規模に対して音楽家の数が多く、世界的に注目されている芸術家が大勢います。

神話や伝説は常に重要な役割を果たしてきました。また文学はさまざまな民話の口承が起源となっています。多くはのちに文字化され、今では書籍となっています。

昔から民話を語り合ったり演技を見せ合ったりする豊かな文化はあったものの、1984年までプロの劇団はありませんでした。
2011年になって初めてグリーンランドに演劇学校が開設されました。

工芸にも長い伝統があります。
色鮮やかな毛織物(アノラック)やハンドメイドのブーツ(カミック)は、伝統衣装の一部です。

 

厳寒のグリーンランドでは何百年も前からアザラシなどの動物の毛皮が必需品として使われてきました。
しかし近年においてはデザインが目覚ましい発展をとげています。
自国と世界とのスタイルを融合させ、毛皮や革を独創的に取り入れたハイレベルでクリエイティブなデザインが登場しているのです。


伝統的なアノラックとカミックを着たグリーンランドの少女。 写真: Julia Ridlington