海兵隊の基地に海軍、空軍…やまぬ増強、広がる騒音 山口・岩国市 基地と共存掲げながらFCLPとは一線画す

 2023/07/25 08:33、南日本新聞 配信より

 

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米軍岩国基地(奥)の監視を続ける戸村良人さん=6日、山口県岩国市

米軍岩国基地(奥)の監視を続ける戸村良人さん=6日、山口県岩国市

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 鹿児島で自衛隊の新基地建設や部隊増強が続いている。海洋進出を強める中国を念頭に米軍との一体化も進む。基地があることは地方の暮らしにどんな影響を及ぼすか。鹿児島との関わりが深まる沖縄と山口県岩国市周辺の現場を訪ねた。(連載「基地と暮らして 安保激変@沖縄、岩国」⑧より)

 「嘉手納や三沢からたくさん来とる」。7月上旬、山口県岩国市の臨海部に位置する米軍岩国基地近くの堤防。アマチュア写真家の戸村良人さん(76)=同市周東町=は、戦闘機が並ぶ滑走路や駐機場を眺めて言った。10年前から基地の監視を続けている。

 岩国基地は米海軍原子力空母ロナルド・レーガンの艦載機の駐留拠点。この部隊が、西之表市馬毛島に整備中の自衛隊基地で陸上離着陸訓練(FCLP)をする予定だ。

 艦載機は毎年5月ごろから秋にかけて空母や洋上に展開するため、この時期は米軍機が少なくなる。今年は大規模演習「ノーザン・エッジ」が行われ、沖縄や青森から多数の外来機が飛来した。

 近年は併設する港湾施設に強襲揚陸艦などの大型艦船の寄港も目立つ。元市議の田村順玄さん(77)は「海兵隊の基地に海軍が同居し、空軍の部隊まで来る。米軍にとって使い勝手がいい便利な施設になっている」と指摘する。

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 滑走路から西へ約2キロ。同市旭町の山本満治さん(86)は「艦載機が来てやかましくなった」と語気を強める。かつて市の基地対策担当部長を務めた。騒音被害の軽減や墜落事故防止のため、滑走路を1キロ沖合に移すよう国に求めた経験がある。

 2010年に移設は実現した。一方で、それが「増強」の呼び水となったと見る向きもある。在日米軍再編で厚木基地(神奈川県)の艦載機移転が日米で合意され、18年3月までに約60機全てが岩国に移った。岩国の所属機は約120機に倍増し、極東最大級の航空基地となった。

 山本さんは自宅の壁や窓に防音を施している。それでも家族の会話や電話が遮られることがある。「その後の経緯を考えれば、移設はすべきではなかった」。後悔の思いを口にした。

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 隣接する広島県にも騒音は広がる。基地の北東約9キロ、世界遺産の厳島神社がある宮島(同県廿日市市)。国の測定器で「騒がしい街頭」に当たる70デシベル以上が、22年度は716回を数えた。艦載機移駐前の17年度の3.3倍だ。

 「時々『ゴォー』と音がするが、問題にはなっていない」。宮島の住民組織代表を長年務める正木文雄さん(73)は説明しつつ、「宮島は神の島。悪いイメージが付いたら観光の町にとって死活問題だ」と吐露する。

 宮島の対岸に住む市民団体「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県住民の会」事務局の西浦紘子さん(78)は、友人と戦闘機の話をする機会が増えた。「音の大きさはもちろんだが、測定器では測れないストレスがある」

 騒音に慣れたという住民もいる。ただ、00年まで岩国基地で行われた艦載機のFCLPは「類のない爆音だった」と口をそろえる。基地との共存を掲げる岩国市だが、FCLPには容認できない立場を貫く。

 

〈関連〉米軍岩国基地の場所を地図で確認する