2023.10.07
伊ナポリ近郊の「超巨大火山」で地震活動が活発化
イタリア・ナポリ西郊にある「スーパーボルケーノ(超巨大火山)」カンピ・フレグレイ(フレグレイ平野)の衛星画像。カルデラの大部分はポッツオーリ湾に沈んでいる。
2016年12月9日撮影(Copernicus Sentinel 2017/Orbital Horizon/Gallo Images/Getty Images)
イタリア・ナポリ西郊の人口密集地域で、ここ数週間、マグニチュード(M)4.2の揺れを含む数百回もの群発地震が発生している。
国立地球物理学火山学研究所(INGV)の専門家チームは、このような地震活動は火山帯では珍しくないとしつつ、近い将来に強い地震が起きる可能性もあるとして地元当局や住民に警戒を呼び掛けている。
INGVの上級研究員ジャンフィリッポ・デ・アスティス博士は「ここ数カ月間、地震活動が活発化している。2023年に入ってから3000回以上の揺れを観測した」「とはいえ、M2.0以上の地震は65回だけだ」とAP通信に語った。
After the last seismic swarm occurred on Sept 7, 2023, an update on Campi Flegrei seismicity and ground uplift has been published on INGVvulcani blog. https://t.co/17PKkQUyH1
— INGVvulcani (@INGVvulcani) September 9, 2023
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ナポリは3つの活火山に囲まれている。西のイスキア島、北西のカンピ・フレグレイ(フレグレイ平野)、南東のソンマ・ベスビオ火山群である。
カンピ・フレグレイは、3万7000年前と1万5000年前に噴火した「スーパーボルケーノ(超巨大火山)」の一部だ。この2回の超巨大噴火では、地下のマグマだまりに一部空洞が生じ、地面が崩れ落ちて直径12kmのカルデラを形成した。このマグマだまりは地下2~5kmの浅いところにあり、時間の経過とともに、深さ約8~10kmの場所にある大規模なマグマだまりからマグマが供給・蓄積される。超巨大噴火の後も56回の小規模な噴火を繰り返したが、1538年を最後に噴火していない。
火山活動は現在も続いており、広範な熱水活動と群発地震が1950年代、1970年代、1980年代、そして2000年以降に観測されている。また、地盤が数十年周期でゆっくり隆起し、再び沈下する「緩慢地動」と呼ばれる現象も起きている。カンピ・フレグレイのカルデラの中心に位置する港町ポッツオーリは、この50年間で4メートル近く隆起した。
今年初めに発表された研究によると、隆起と地震活動は、火山ガスや火山熱水がマグマだまりの上部にある地殻に浸透し、スポンジに水が沁み込むように隙間を満たすことによって引き起こされている。
これは必ずしも差し迫った火山噴火の兆候ではない。米イエローストーン国立公園でも同様の現象が起きているが、この約7万年間というもの大きな噴火は起きていない。
「何世代にもわたって静かな火山はすべて同じだ。カンピ・フレグレイは、世界各地のこの種の火山で見られるように、緩やかな隆起と沈下を新しい周期で繰り返すようになるかもしれないし、また静かな状態に戻るかもしれない。今後の展開がどうなるかはまだ何とも言えない。あらゆる結果に備えることが重要だ」と、ベスビオ火山観測所のステファノ・カルリーノ博士は結論付けている。
カンピ・フレグレイでは、カルデラ内で最も活動が活発な一帯に推計30万~60万人が暮らす人口密集地なため、高危険地域として研究者や当局が常時監視を続けている。イタリア災害防護庁は2012年「カンピ・フレグレイ国家緊急事態計画」における4段階の警戒レベルを上から2番目の「警戒(Attention)」に引き上げた。
(forbes.com 原文)
翻訳・編集=荻原藤緒
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