自民、主戦論と不戦敗論が交錯 衆院長崎3区補選

 

自民、主戦論と不戦敗論が交錯 衆院長崎3区補選 [長崎県]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 

写真・図版
小選挙区の区割り

 

 自民党政治資金パーティーの裏金問題をめぐり、衆院議員だった谷川弥一氏(82)=自民党を離党=の辞職に伴う衆院長崎3区補欠選挙の対応に自民が苦慮している。自民県連内の一部に慎重な意見がある上、候補者を擁立しても、今後の区割り変更で次期総選挙での処遇を視野に入れた調整が求められる。「主戦論」と「不戦敗論」が交錯している。

 

 長崎3区の補選は、東京15区、島根1区とあわせて4月16日に告示、28日に投開票される。裏金事件による派閥の解散や高まる政治不信などで、自民にとっては、逆風の選挙戦になるとみられる。

 

 「谷川氏が裏金問題の責任をとって議員辞職した結果として実施される補選に、自民から候補者を立てるという大義自体が成り立たない」。「そもそも今回の補選が行われる根本の理由を考えないといけない」。複数の自民関係者はこう話す。補選に候補者を立てるべきではないとする意見だ。県連内の一部にこうした「不戦敗論」がくすぶる。

 

 一方、「主戦論」も日を追うごとに高まっている。「(逆風でも)立候補すること自体がみそぎだ。(区割り変更で)ただでさえ県内の国会議員の枠が減る。不祥事とはいえ、党として候補者を立てないというのは別の話だ」「谷川氏は責任をとった。候補者を立てて有権者に選択肢を示すことも党としての責任だ」。そんな声も出始めている。

 

 今回の選挙をさらに複雑にしているのが、「区割り変更」だ。

 

 「10増10減」で次期総選挙から県内の選挙区は1減となる。現在の3区は新2区と新3区に分かれるが、新2区・新3区の公認予定者は既に決まっている。仮に3区補選に候補者を擁立して当選しても、次の総選挙で選挙区から立候補できる可能性は極めて低い。

 

 議員辞職した谷川氏は次期衆院選で、比例九州ブロックに転出することが決まっていた。ただ、谷川氏を比例単独として名簿の上位で優遇しようとした党本部の方針は「当選7回の経歴をほこり、長崎県政に影響力のある谷川氏への特例措置」(党関係者)だったとされる。

 

 衆院議員の任期満了は来年10月30日。「主戦論」を唱える県連関係者からも「大逆風の中、任期も折り返しを過ぎ、次の総選挙では立候補する選挙区もない補選。比例での処遇を考えてあげなければ、こんな補選に手を挙げてくれる政治家はいない」との声も漏れる。ただ、「現時点で党本部は補選の候補者を総選挙で優遇することに否定的」(複数の党関係者)との見方が強い。

 

 自民から漏れてくるこうした声や動静を注視しているのが、20年以上、自民党と連立を組んできた公明党だ。

 

 「そもそも補選は『政治とカネ』の問題(が問われる)。公明として自民(候補)を推薦するのかという問題がある」。公明関係者はクギをさす。

 

 20年以上におよぶ自民、公明両党の連立は、公明から自民への「選挙応援」を基盤に、「持ちつ持たれつ」の関係で成り立ってきた。公明は、支持母体の創価学会の集票力を動員。選挙区で組織票を自民候補に提供する代わりに、比例票を公明に振り分けてもらうという「すみ分け」だ。

 

 だが、複数の関係者によれば、谷川氏の比例単独への転出が発表された昨年3月の前後、自民、公明間で続けられてきた比例区でのすみ分けと谷川氏の取り扱いについて正式な協議がなされたわけではなかったという。

 

 補選への対応について、ある公明関係者は「自主投票の可能性もある。我々からは仕掛けない。(自民から)お伺いがあれば対応する」と、世論の動向も含めて情勢を見極める構えだ。

 

 ただ、自民が谷川氏と同様に、補選で擁立する候補者を次の総選挙でも比例単独で名簿上位などにして処遇する場合、「自民党は『比例は公明』と悠長なことを言っていられなくなる。『比例も自民』と言うことになる」(自民党関係者)という状況も想定される。

 

 公明関係者は総選挙も見据え「こちらとしては(比例で)どれだけ公明を応援してくれますかという話になる」という。自民の比例での動きによっては「(公明が選挙区で)自民候補を推薦ということも成り立たなくなるかもしれない」と牽制(けんせい)する。