玄関傾き、壁にひび「いつも通りできなかった」金沢商 春高バレー

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玄関傾き、壁にひび「いつも通りできなかった」金沢商 春高バレー(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

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スパイクを打つ金沢商の南桃花主将

 

 (4日、第76回全日本バレーボール高校選手権女子1回戦、今治精華《愛媛》2―0金沢商《石川》)

 

  【写真】笑顔をみせる金沢商の選手たち。応援席には「力を合わせてがんばろう石川」のメッセージボードが掲げられた  

 

元日の能登半島地震から3日しか経っていない。余震は今も続いている。  

 

22年連続49回目出場の金沢商は3日、バスで7~8時間かけて東京に入った。誰しもが、葛藤を抱えていた。南桃花主将は言う。  「離れている間にまた余震が来るんじゃないか」  

 

3年間の集大成となる「春高バレー」。当初は大会への参加も危ぶまれた。  

 

部員は22人。小坂慎吾監督によると、地震があった1日夜に、バレー部のLINEグループで全員の無事を確認できた。だが、避難所生活となった選手も数人いて、翌2日の全体練習は全日から午後練習に短縮した。  

 

1年生の福島礼は自宅が大きな被害を受けた一人だ。  

 

金沢市の自宅のリビングで寝ていた時、大きな揺れを感じた。「逃げるよ」。母親に連れられて家の外へ。避難所に身を寄せた。輪島市の朝市通りの火災を伝えるニュース映像を見て、「自分の知っている町がなくなっちゃうのはつらい」。  

 

自宅は玄関や脱衣所が傾き、壁にヒビが入っている。生活できず、市内にある別の家に避難した。2日の練習中も「ずっと家のことが気がかり」で身が入らなかった。  

 

そんな中、金沢に残る両親は「良い結果待っているからね」と言って、送り出してくれた。  

 

試合前、主将の南はこんな風に仲間を奮い立たせた。  

 

「楽しそうにプレーして、大変な思いをしている人に元気を届けよう」  

 

保護者のみに限られた応援席には、「力を合わせてがんばろう石川」のメッセージボードが掲げられた。  

 

先に試合を終えた明秀日立(茨城)のブラスバンドは、応援曲を奏でてくれた。  

 

声援に後押しされ、金沢商は粘り強いバレーを見せた。体を投げ出すレシーブで守り、南のサービスエースなどで接戦に持ち込む。得点を決めても、失点しても、必ず笑顔で円陣を組んだ。だが、2セットを連取されストレート負けとなった。  

 

福島は「いつも通りできなかった。家族の期待に応えたかった」と目を真っ赤にした。  

 

南主将も「なんとしても勝ちたかった」と悔しさを隠さない。ただ、こうも言った。  

 

「どうなるかわからない状況で、全員で春高に来られたことは良かった」

 

(大宮慎次朗)

 

朝日新聞社

 

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