黒田前総裁「異次元緩和」導入の経緯明らかに 日銀が議事録を公開

配信

 

黒田前総裁「異次元緩和」導入の経緯明らかに 日銀が議事録を公開(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

配信より

 

日銀総裁就任後初の金融政策決定会合を終え、記者会見で質問に耳を傾ける黒田東彦氏=東京都中央区で2013年4月4日午後4時6分、矢頭智剛撮影

 

 日銀は31日、黒田東彦前総裁が「異次元緩和」と称される大規模な金融緩和政策を導入した時期を含む2013年1~6月の金融政策決定会合の議事録を公開した。異次元緩和を決定した4月3、4日の会合では、黒田氏は「量・質ともにこれまでと次元の違う金融緩和を行う必要がある」と発言し、大量の国債購入を柱とした異次元緩和の導入を主導した経緯が明らかになった。  

 

◇黒田氏「できることは全てやる」  

 

黒田氏は、大胆な金融緩和を「第一の矢」とする経済政策「アベノミクス」を掲げる安倍晋三政権の指名で日銀総裁に就任。黒田氏の就任後初となる13年4月の会合では、物価が前年比2%上昇する「物価安定目標」を「2年程度」で達成するため、国債の大量購入などで日銀が世の中に供給するお金の供給量を「2倍」に増やすことを柱とする金融緩和策の導入を決めた。  

 

議事録によると、黒田氏は会合で「分かりやすく情報発信をすることで、市場や経済主体の認識を転換させる必要がある。できることは全てやる」と述べ、大規模緩和に踏み出す流れを決定づけた。他の出席者も「新体制となった機を捉え、一段と強力な金融緩和を検討することは重要」(宮尾龍蔵審議委員)などと同調。日本経済の停滞を招いていた「デフレ(持続的な物価下落)」からの脱却を目指すことで一致した。  

 

ただし、「ギャンブル性の強い政策となることは覚悟すべきだ」(佐藤健裕審議委員)、「(2年での目標)達成には不確実性がある」(木内登英審議委員)との懸念も出ていた。  

 

前代未聞の大規模金融緩和は「黒田バズーカ」と称され、金融市場では株高・円安が進んだ。しかし、肝心の物価の反応は鈍く、2年後の15年度の消費者物価指数(生鮮食品除く)は0%、16年度はマイナス0・2%に沈んだ。  

 

短期決戦のもくろみが外れた黒田日銀は、16年にマイナス金利政策導入や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)など持久戦を狙った緩和策を次々と導入したものの、物価安定目標は達成できなかった。黒田氏は日銀総裁として歴代最長となる10年の任期を務めて23年4月に退任。後任の植田和男総裁のもとでも大規模緩和は続いている。【杉山雄飛、岡大介】  

 

◇日銀の金融政策決定会合と議事録  日銀は、金融政策を、定期的に開く金融政策決定会合で議論し、総裁、副総裁2人、審議委員6人の計9人の「政策委員」が多数決で決定している。定例会合は年8回、2日間の日程で開催。経済危機時などには臨時会合が開かれる場合もある。会合の「議事要旨」は約1~2カ月後に公表されるが、すべての発言を実名で公表する「議事録」は10年後に公開される。  

 

◇異次元の金融緩和  日銀が黒田東彦総裁のもと2013年4月に導入した大規模な金融緩和政策。日銀は「量的・質的金融緩和」と呼ぶ。2%の物価安定目標を2年程度で実現するため、日銀が長期国債を大量購入し、世の中に供給するお金の量(マネタリーベース)を拡大することが柱。導入当初は、マネタリーベースを年間約60兆~70兆円ペースで増やし、マネタリーべースと、日銀が保有する長期国債、上場投資信託(ETF)を2年間で2倍に拡大する方針を掲げた。前任の白川方明総裁時代に導入した、事実上のゼロ金利や国債などの資産買い入れを柱とする「包括的な金融緩和」を抜本的に強化した。

 

【関連記事】