脱炭素でコンビナート復権へ、ENEOS・三菱ケミカルが廃プラ油化
脱炭素でコンビナート復権へ、ENEOS・三菱ケミカルが廃プラ油化 (2ページ目):日経ビジネス電子版 (nikkei.com) 配信より
日本の高度経済成長を支えてきた石油化学コンビナート。産業構造の変化で存在感は薄れつつある。ただ、脱炭素の波が押し寄せてきたことで、その威力を発揮する可能性が出てきた。石油精製から樹脂製品を製造する設備や供給網が整っており、資源循環を進めやすいというメリットがあるためだ。コンビナートは日本の脱炭素における推進役へと生まれ変われるか。
コンビナートで脱炭素に取り組むのはENEOSと三菱ケミカルだ。それぞれ鹿島臨海工業地帯に拠点を持つ石油と化学の業界の両雄がタッグを組み、ケミカルリサイクルの一種である廃プラスチックの油化を進めていく。
廃プラの油化とは使用済みのプラスチック製品を、原料である石油に戻す技術だ。外部から廃プラを調達し、廃プラのケミカルリサイクルを手がける英Mura Technology(ムラテクノロジー)の超臨界水技術と呼ぶ技術を使う。高温高圧の超臨界水で廃プラを分解し、油へと再生する。従来法と比べても収率が高く、不純物の少ない高品質なリサイクル油が得られるという。
こうして生成したリサイクル油を、ENEOSの石油精製装置や三菱ケミカルのナフサクラッカーで原料として使用。石油製品やプラスチック製品などへと再び形を変える仕組みだ。三菱ケミカルの茨城事業所(茨城県神栖市)に油化のためのケミカルリサイクル設備を整備し、2023年度から事業を始める。油化の処理能力は年間2万トンを計画しており、両社によると商業ベースでは国内最大規模となる。
三菱ケミカルの茨城事業所に設備を整備し、2023年度に油化事業を始める計画だ
ENEOSと三菱ケミカルは19年、鹿島コンプレックス有限責任事業組合(LLP)を設立した。茨城県鹿島地区(鹿嶋市、神栖市)での石油精製や石油化学事業で連携を深めるのが目的だ。精製した石油をもとに石油化学製品が作られていくといったように、もともと事業構造としての結びつきが強い。国内で石油製品や石油化学製品に対する需要が減少傾向にある中、協業によって効率的に製品を供給できる体制が整えやすくなるという考えだ。
LLP設立時から、原料や製造プロセスの効率化、ガソリン基材の石化利用、石化製品の生産最適化などを検討してきた。三菱ケミカル側から持ちかけたという今回の廃プラ油化事業は、まさにLLPにおける目玉事業の一つといえる。
2度目の廃プラ油化事業
廃プラの油化はENEOSにとって、実は2度目の挑戦となる。旧新日鉱ホールディングスの傘下にあった当時のジャパンエナジーが04年から水島製油所(岡山県倉敷市)で、廃プラ油を石油製品に再生する実証実験を始めた。東芝や三井物産などが出資していた札幌プラスチックリサイクル(札幌市、当時)などとタッグを組み、08年7月には商業化。順調に事業を進めていたという。
ただ、プラスチック容器包装のリサイクルを促す国の補助金制度における方針転換などもあり、採算性が悪化。熱回収(サーマルリサイクル)など他のリサイクル方法と比べてコスト競争力で劣り、11年ごろには事業撤退を余儀なくされた。札幌プラスチックリサイクルは解散に追いやられた。
(中略)
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