「徴用」問題 韓国政府 あすにも解決策発表する方向で最終調整
「徴用」問題 韓国政府 あすにも解決策発表する方向で最終調整 | NHK | 徴用問題
配信より
太平洋戦争中の「徴用」の問題をめぐり、韓国政府は6日にも、裁判で賠償を命じられた日本企業に代わって、韓国政府の傘下の財団が原告への支払いを行うとする解決策を発表する方向で最終調整しています。
「徴用」の問題をめぐり、韓国政府はことし1月、解決策として、裁判で賠償を命じられた日本企業に代わって、韓国政府の傘下にある既存の財団が原告への支払いを行う案を軸に検討していることを明らかにしました。
この案について、日韓両政府の外務省の担当者が、協議を重ねてきたほか、先月末にはパク・チン(朴振)外相が裁判の原告らと面会して政府の方針を説明し、理解を求めるなど、調整が進められてきました。
こうした中、韓国政府は6日にも、解決策を発表する方向で最終調整しています。

韓国メディアは、財団が支払いを肩代わりするとした、1月に発表された案に沿ったものになると報じていて、ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権が日韓関係の改善に向けた強い意欲を示す中、解決策の策定作業が大詰めを迎えています。
また、韓国メディアは、日本企業による原告への支払いの代替策として、日本の経団連と、韓国の経済団体の全経連=全国経済人連合会が、両国の留学生の奨学金などに充てることを想定した基金を、新たに設けることを検討していると報じています。
「徴用」問題 これまでの経緯

日本と韓国は1965年の国交正常化に伴って結んだ日韓請求権協定で「請求権に関する問題が、完全かつ最終的に解決された」と明記し、日本政府はこの協定で「徴用」をめぐる問題は解決済みだとしています。
しかし、2012年に韓国の最高裁判所が「徴用」をめぐって「個人請求権は消滅していない」とする判断を示し、日本企業に賠償を命じる判決が相次ぐようになりました。
そして、2018年、韓国の最高裁で日本企業に賠償を命じる判決が初めて確定すると、原告側は日本企業が韓国国内に持つ資産を差し押さえて売却することを認めるように地方裁判所に申し立てました。
当時のムン・ジェイン(文在寅)政権は、三権分立の原則から司法判断を尊重するとした立場で、日本企業の韓国国内の資産の「現金化」に向けた手続きが進みました。
これに対し、日本政府は韓国政府のこうした対応を「国際法違反だ」と批判し「現金化」が現実のものとなれば、国際法の基盤が覆り、日韓関係は取り返しがつかなくなるとして、日本側が受け入れ可能な形で「現金化」を避ける措置を取るよう強く求めました。
こうした中、日本政府は2019年、韓国側の貿易管理の体制が不十分で安全保障上の懸念があるとして、韓国を輸出管理の優遇対象国から除外する措置を取りました。
韓国側は「徴用」をめぐる問題の報復措置だと反発し、両国の「GSOMIA」=軍事情報包括保護協定を破棄すると通告。
アメリカの反対などもあり、結局、協定は継続されましたが、日韓関係は戦後最悪と言われるまでに冷え込みました。

しかし、去年5月に韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が就任すると、日本との関係改善に意欲を示し「現金化」が行われる前に問題の解決を図りたいという姿勢を打ち出します。

11月には岸田総理大臣とユン大統領により、正式な形ではおよそ3年ぶりとなる日韓首脳会談が行われ、懸案の早期解決を図ることで一致しました。
そして、ことし1月、韓国が、日本企業に代わって韓国政府の傘下にある既存の財団が原告への支払いを行う案を明らかにしました。
これを受けて、先月には林外務大臣が訪問先のドイツでパク・チン(朴振)外相と、また外務省の森事務次官がワシントンでチョ・ヒョンドン(趙賢東)第1外務次官とそれぞれ会談した際にこの案をめぐって意見を交わすなど、日韓両政府の間のやり取りが活発になっていました。
日本政府の対応は「日韓請求権協定で解決済み」

太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題について、日本政府は「1965年の日韓請求権協定で解決済みだ」とする立場で一貫しています。
このため政府内では、韓国側の財団が、裁判で賠償を命じられた日本企業に代わって原告への支払いを行う案であれば、日本の立場とも矛盾しないとして受け入れる方向で調整が図られる見通しです。
ただ、この場合でも、韓国側の財団が、あとになって日本企業に弁済を求めることは容認しないというスタンスです。
一方で、日本政府内では「日本の企業側が自主的に寄付することまでは否定できない」という見方が出ています。
また、韓国政府が解決策を示すに当たり、日本側に「誠意ある措置」を求めていることを踏まえ、日本政府として、植民地支配や侵略への反省とおわびを表明した過去の総理大臣談話などを継承していく立場を表明することも検討されています。
このほか、日韓関係の改善が進めば、首脳が相互に相手国を訪問する「シャトル外交」を再開させることや、2019年に韓国側の貿易管理の体制が不十分だとして韓国を輸出管理の優遇対象国から除外するなどした措置を見直す案も出ています。
日本政府内には「韓国は、政府間の合意を守らなかった過去があり、予断はできない」との声が根強くあり、韓国政府の対応を慎重に見極めたうえで対応していく方針です。




