お寺の置かれた厳しい状況 「坊主丸もうけ」はもはや死語か

川瀬慎一朗 

 

毎日新聞 2022/10/7 06:30(最終更新 10/7 06:30) 有料記事 1958文字

 

お寺の置かれた厳しい状況 「坊主丸もうけ」はもはや死語か | 毎日新聞 (mainichi.jp)

配信より

 

維持管理などの問題から解体されることになった織田信長ゆかりの久昌寺=愛知県江南市で2022年4月6日午後4時5分、川瀬慎一朗撮影
維持管理などの問題から解体されることになった織田信長ゆかりの久昌寺=愛知県江南市で2022年4月6日午後4時5分、川瀬慎一朗撮影

 

お寺の存続が危ぶまれ、「坊主丸もうけ」などと陰口をたたけるような状況ではなくなっているという。特に地方では、過疎化に伴って檀家(だんか)が減り、住職が兼業しなければ維持できない寺院も少なくない。自身も地方寺院の住職を務める、立命館大の水月昭道(みづき・しょうどう)客員教授が、お寺の置かれている現状について“お坊さん”の立場から語った。

 

【聞き手・川瀬慎一朗】

 

 愛知県で最近、織田信長ゆかりの久昌寺(きゅうしょうじ)が解体された。歴史ある名刹(めいさつ)がなくなるのは非常に残念だ。しかし、仏教には本質的に諸行無常観があるので、取り巻く環境の変化を恐れてはいない。

 

 お寺の住職は地域の葬送を担ってきた。我々は「拝む人」であり、地域の人と悲しみや苦しみを共有しながら、心の安定に取り組んできた。全ての物事は移り変わり、同じ姿をとどめ続ける事はないという考えだ。この状況をどう受け止め、どう一歩を踏み出していくべきなのかと考えている。

 

 先代から引き継いだ大きな伽藍(がらん)を維持管理するのは、非常にコストがかかる。住職が背負い切れなくなっている。戦前は広い田畑などを所有していたので、お寺に財産があった。しかし、戦後の農地解放でこうした仕組みがリセットされた。代わりに住職がよそで仕事をして、その給料を建物の修繕費などに充てるようになった。

 

 以前は地方公務員や教員と兼業する住職が多かった。葬儀の依頼はいつあるか分からず、葬儀が入ったときに対応しやすかったからだ。しかし、今はどの職場も忙しく、「葬儀だから」と急に休むのはとても無理だ。

 

 50代くらいで仕事を辞めて先代からお寺を継ぎ、その後は蓄えを取り崩しながらやっていく。それまでは先代の住職が80代くらいまで頑張る。2代で力を合わせ、体力が尽きるまで役割を果たそうとしてきた。

 

 だから、先代が早く亡くなると非常に困る。30代で引き継いでも、資金も時間もなく、維持管理ができない。そのため、よその寺に一緒にやってもらうとか、合併するという流れが加速している。

 

 厳しいから諦めているわけではない。知恵を絞って何とかしようと模索している。その一…

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