【独自調査】「東京選挙区」の激戦区を徹底分析 落選危機の大物候補たち〈dot.〉

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党首討論に臨んだ各党の党首たち(C)朝日新聞社

 19日、第49回衆議院選挙公示され、投開票まで12日間の選挙戦がスタートした。AERA dot.では自由民主党と立憲民主党がそれぞれ調査した各選挙区の情勢調査を独自入手。激戦となる東京選挙区を分析すると、野党共闘で苦戦しそうな自公の候補者、野党でも落選危機にある大物候補者が浮かび上がってきた。17年衆院選の得票数をもとに、独自入手した情勢調査、専門家の分析も加えて「東京選挙区」のゆくえを探った。 【図表】野党共闘で与党候補が苦戦しそうな東京の13選挙区はこちら ※本記事は公示前の調査、識者の分析になります。

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「吉田の知名度が上がった。まさに『雨降って地固まる』だ」  

こう自信をのぞかせるのは東京8区の立憲関係者だ。「吉田」とは立憲候補者の吉田晴美氏のことだ。  

8区は、れいわ新選組の山本太郎代表が出馬表明をして騒動となった選挙区だ。

8区では、17年衆院選で野党(立憲、日本共産党、希望の党)が得た票を全て合わせると13万9000票となり、自民党元幹事長の石原伸晃氏が獲得した9万9000票を大きく上回る。野党の候補者が一本化できれば自民重鎮・石原氏に勝てる可能性が高いと、野党共闘の象徴と目されていた。  

そもそも、立憲陣営では吉田氏で一本化の調整を進めていたが、8日に山本氏が出馬表明したことで状況が一変。吉田氏の陣営からは「聞いてない」と反発の声があがり、野党共闘を望む支持者からも「なぜ吉田さんではないのか」とSNSなどで抗議の声が上がった。

あまりの反発の強さに、山本氏も8区からの出馬を取りやめ、結局は東京から比例代表として出ることになった経緯がある。先の立憲関係者はこう語る。

「正直、山本さんが出たからと言って当選するとは限らなかった。彼は8区で活動してきたわけではない。吉田のほうが地元でしっかりと活動してきたから、反自民の受け皿になると思う。石原さんも今回は余裕がないんじゃないかな」  

石原陣営の様子はどうか。石原氏のツイッターを見ると、19日だけで10件も投稿があった。

投稿された動画では「今回の戦いは民共・野合連合と自公・保守中道政権との厳しい戦いです」と野党の選挙協力を批判しながらも、厳しい戦いになるという認識を示すものも。陣営からも強い危機感がうかがえる。自民党関係者はこう語る。

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岸田が落胆「自民党調査」が示した「マイナス50議席」危機

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 衆院選が10月19日に告示され、12日間の与野党対決が幕を開けた。  

自民党では、菅義偉前首相の退陣で政党支持率が10ポイント近く改善し、「大敗はなくなった」などと楽観視する向きがあるが、事態はそう簡単でない。  

立憲民主党と共産党などによる候補一本化の影響が広がっており、当落線上で苦しむ自民候補が50人近くいると見られる。自民の負け幅が大きくなれば、船出したばかりの岸田文雄首相の求心力に重大な影響が出かねない。

自民党調査で激戦区が50以上

 「かなり気合を入れて回らないと大変だ・・・」  自民が衆院選に向けた候補者調整を終え、2次公認を発表した同月15日。首相は党本部で甘利明幹事長、遠藤利明選対委員長と向き合いながら、こうこぼした。  

今回、首相らが候補者調整の基礎資料として使ったのが、党が今年3回行った全選挙区を対象とした情勢調査の資料だ。首相が特に落胆したのは、新政権の誕生後となる10月7~10日に行った最新調査の結果だった。菅前首相の退陣と、総裁選で政策論争をやり抜いた効果は出ていたものの、立憲と共産が進めた候補一本化の影響で相殺され、与野党候補の支持率の差が数ポイントしかない激戦区が50カ所以上にのぼっていた。  

今回、立憲と共産、社民、れいわ新選組の4野党は市民グループ「市民連合」を介在役に政策協定を結んだうえで、選挙区で緊密な候補一本化の調整を行なった。その結果、全289選挙区のうち約210で、共産が候補を降ろすなどして候補を一本化。政策協定に加わらなかった国民民主党も、4野党と実質的なすみわけを行うケースが増えた。  

2017年の前回衆院選では、野党勢力が小池百合子都知事の率いた「希望の党」と枝野幸男代表が創設した立憲に分裂して争い合い、野党が候補を一本化できた選挙区は全体の2割程度にとどまっていた。それが今回は、一気に7割強まで比率が増えたのだ。  

一般に共産は、各選挙区で支持層として2~3万票を有しているとされ、一本化に成功した野党候補は純粋に票が上積みできる。  自民は安倍晋三政権などの下で行った過去3回の衆院選で圧勝したが、足元をみると1~3万票程度の僅差で勝ち抜けた地盤の弱い議員が多い。一本化の影響で当選が危うい状況に陥った議員は、若手だけでなく閣僚経験者などのベテラン勢にも少なくない。  

立憲・共産は、公示直前まで激戦区の分析を続け、10月上旬にも、25選挙区で共産候補を撤回するなど候補を一本化。結果的に、共産は今回、選挙区の候補者を前回(206人)から半減して105人まで絞り、選挙区での野党共闘を進めた。

次ページは:与野党一騎打ちで苦戦する閣僚経験者

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「まさかの落選危機も…」官邸と与党が心配する岸田内閣の現職3閣僚〈dot.〉

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左から遠藤選対本部長、麻生副総裁、岸田首相、甘利幹事長(C)朝日新聞社

 自民党は衆院選に向けて、第2次公認を発表した。二階派と清和政策研究会(細田派)、麻生派などで保守分裂か、と注目されていた群馬1区や福岡5区などの小選挙区の候補者が決定している。 【“落選危機”自民・公明党議員リストはこちら】

 党内で公認争いが激化していた小選挙区の調整は、甘利明幹事長と遠藤利明選対本部長が中心になっていた。だが、公認直前には麻生太郎副総裁も加わった。 「15日に官邸で麻生氏、甘利氏、遠藤氏が岸田首相と断続的に会談して、候補者を調整していました。岸田首相はずっと険しい表情でしたね」(自民党幹部)  

岸田内閣が発足し、わずか10日で解散となり、選挙に突入するという異例の短期決戦。組閣から間がないので、現職閣僚が苦戦している小選挙区がいくつもある。  

特に自民党、官邸が「負けたら大変なことになる」と力を入れるのが、初入閣した大臣たちの選挙区だ。  

西銘恒三郎・復興相(竹下派)の沖縄4区、山際大志郎・経済再生担当相(麻生派)の神奈川18区だという。  

西銘氏は当選5回で父親の順治氏は沖縄県知事、衆院議員を務めた政治一家だ。しかし、地元の自民党県議は険しい表情だ。 「西銘氏が復興相になったのは追い風だ。これで挽回したい」    

自民党が10月に実施した世論調査では西銘氏と立憲民主党の新人、金城徹氏は差がわずかで、大接戦となっている。立憲の世論調査の数字では、金城氏が西銘氏に対し、わずかに優勢という数字だった。西銘氏は過去5回の当選の中で、4回は小選挙区で当選、1回は比例復活している。

◆西銘復興相と「オ-ル沖縄」立憲新人が接戦の沖縄4区  2009年に旧民主党政権が誕生した選挙では、比例復活もできなかった。相手の金城氏は元那覇市議で議長も務めた。元沖縄県知事の翁長雄志氏(故人)と近く、市議時代は自民党から出馬したこともあった。保守と革新が呉越同舟の「オール沖縄」からの支援も受けている。

「もともとは西銘氏の強固な地盤でしたが、沖縄で強い革新票は確実に金城氏がとるでしょう。金城氏は自民党にいたこともあり、西銘氏支援の保守層にも食い込んでいる。それが接戦になっている要因の一つです」(立憲幹部)

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