静岡5区 自民新体制で波紋拡大【衆院選 選挙区攻防】
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(写真:静岡新聞社)
「次の選挙で勝利できなければ政界から引退する。厳しい環境を乗り越えたい」。自民党入りを目指す無所属現職の細野豪志氏は1日の会見で、過去7回と異なる立場で挑む衆院選へ覚悟を示した。
選挙戦で抜群の強さを発揮してきた旧民主党政権幹部。同氏の野党離脱で衆院静岡5区の選挙区情勢は一変。与野党各支援組織が揺れ動いた。
2017年の前回衆院選で結党メンバーとして立ち回った希望の党が18年5月に解党し、細野氏は無所属のまま、19年1月に自民二階派の特別会員になった。同3月に自民岸田派の吉川赳氏が繰り上げ当選。党公認問題がくすぶり続ける中、9月の菅義偉内閣の退陣とともに細野氏の後ろ盾とされてきた二階俊博氏が党幹事長を退任し、吉川氏が属する派閥の長、岸田文雄氏が総裁選を制して首相に就いた。
党内情勢が激変する中、現職2人は4度目の対決に臨む。
細野氏は、離れた野党支持者に代わる支持基盤の構築に向け、企業経営者らによる後援組織を相次ぎ設立。地元で影響力を残す元首長とも連動し、保守層を切り崩す。最近では比例票を求める公明党にも秋波を送り、連携を模索する。長年、細野氏を支える後援会幹部は「逆境を引き締めにつなげたい」と引退発言の真意を代弁する。
細野陣営の攻勢に対し、吉川氏を支援する自民5区支部は3年弱の間に何度も「細野氏の入党拒否」を表明し、対抗姿勢を堅持してきた。吉川氏は菅内閣で内閣府政務官のポストを得て地元要望をつなぎ、総裁選や参院静岡選挙区補欠選挙と連動して自民候補としての“正当性”を強調する。
補選告示日の7日に静岡入りした岸田首相にも同行。首相を囲む大勢の聴衆を見た支部幹部は「吉川が自民本流。悪い流れが断ち切れた」と話し、「公認は間違いない。比例重複立候補も認められるはずだ」と期待する。
現職対決に割って入る立憲民主党新人小野範和氏は街頭活動を継続する。参院補選の党推薦候補と行動を共にし、自らの浸透と政権批判票獲得を目指す。ただ、小野氏を推薦する野党最大の支持団体、連合傘下の労働組合の足並みはそろっていない。
5区内は国民民主党を推す旧同盟系労組が大半なのが実情。ある労組幹部は「裏切った細野氏を推せないが、共産と共闘姿勢の立民とはどうしても距離がある」と明かす。
細野氏から離れ、浮遊する労組票を小野氏が獲得できるかが当落に影響しかねず、吉川陣営も労組票の行方を注視する。
諸派新人の千田光氏は独自の戦いを展開する。
立候補予定者
細野豪志 50 無所属現⑦ (元)環境相
吉川赳 39 自民現② (元)内閣府政務官 小野範和 48
立民新 (元)銀行員 千田光
43 諸派新 土木工事会社社長 立候補予定者は10日現在、調整中を含む。
氏名は敬称略、本名。芸名や旧姓などが通用している場合は通称名。
年齢は10日現在の満年齢。名簿の並べ方は①当選回数②現元新③衆院勢力―の順
静岡新聞社