「黒い雨」訴訟の原告に被爆者手帳交付 広島市は8月2日から

毎日新聞 2021/7/30 19:03(最終更新 7/30 19:03) 配信より

「黒い雨」の体験者への被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟の控訴審判決で、全面勝訴の垂れ幕を掲げる原告団の弁護士=広島市中区で2021年7月14日午後3時3分、山田尚弘撮影

広島への原爆投下後に降った「黒い雨」を巡り、国の援護対象区域外にいた原告84人全員を被爆者と認めた広島高裁判決の確定を受け、広島市は30日、被爆者健康手帳の交付を8月2日に始めると発表した。他の自治体でも順次交付される。

高裁判決は、全員に手帳交付を命じた1審・広島地裁判決を支持し、国側の控訴を棄却。菅義偉首相は26日、上告断念を表明し、原告に手帳を速やかに交付し、原告以外の救済も検討する方針を示した。

国は被爆者認定の審査指針を改める方針で、広島県や市には「自分は手帳の交付対象か」などの問い合わせや相談が50件以上寄せられている。

広島県安芸太田町の新田繁さん(87)は、11歳の時に爆心地の北西約20キロの同県旧安野村で黒い雨を浴びた。当時、血の付いた紙切れやぼろぼろの着物の端切れなどの後に雨が降ってきたという。ただ、援護対象区域外で裁判にも経済的理由から参加できなかった。2013年にがんで胃の約3分の1を摘出した新田さんは「いつまで生きられるかわからんけえ、早く手帳がほしい。何年も待つことはできん。結論が出る時期だけでも早く知りたい」と訴えた。

【小山美砂、賀有勇】

毎日新聞 2021/7/30 19:03(最終更新 7/30 19:03)