危機の「雲州人参」、薬草酒で再興を 出雲の医師らCF
清水優志2021年5月22日 9時30分、朝日新聞 配信より

薬草酒開発の中心となった片岡諒さん=2021年5月14日午後2時21分、島根県出雲市塩冶町、清水優志撮影

【島根】江戸時代、松江藩で盛んに栽培された生薬「雲州人参(にんじん、高麗人参)」。生産者の減少などで存続が危ぶまれる中、島根大学の医師や地元酒蔵の杜氏(とうじ)らが復活に向け動き出している。まずは薬草酒の商品化を目指し、クラウドファンディング(CF)で資金を募っている。

 高麗人参は滋養強壮などの薬効で知られる高級品で、江戸時代に八代将軍徳川吉宗が種を諸藩に配ったことから国内での栽培が始まったとされる。

 栽培に成功した地域のうち、会津(福島県)、信州(長野県)、雲州(島根県)が三大産地として知られるようになり、なかでも松江の高麗人参は最高級品の「雲州人参」として珍重され、松江藩の財政立て直しにも貢献したという。

 しかし、栽培に手間がかかることや、収穫まで4~6年を要することなどから生産農家が減り、現在は大根島(松江市八束町)にある日本庭園「由志園」や島内の数戸に限られる状況だ。

 島根大学の医師や生薬研究者らでつくる「出雲漢方研究会」は、苦境にある雲州人参を盛り上げるとともに、生薬に親しんでもらうため健康にいい薬草酒を開発して世に出すことを企画した。医師や生薬研究者に加え、清酒「天穏(てんおん)」で知られる板倉酒造(出雲市塩冶町)の杜氏、小島達也さんらが配合を担い、体調に合わせて飲めるよう、二つの薬草酒をつくりあげた。

 「神名火(かんなび)」は雲州人参を配合し、主に胃腸の力を高める効果を重視。「火之護(ひのもり)」に人参は入っていないが、シナモンやショウガなど体を内側から温める効果がある生薬をバランス良く配合した。薬草酒にありがちな「薬臭さ」を茶やはちみつで消し、食前酒としてそのまま飲めるほか、ソーダやジンジャーエールで割るのもおすすめという。

 開発の中心となった島根大医学部医学科6回生の片岡諒さん(27)は「雲州人参など国内産の生薬は、海外の安い生薬に押され、危機的な状況にある。高付加価値の商品をつくることで、国産生薬を守るきっかけにしたい」と話す。

 商品を販売して利益を出し、栽培面積を広げることにもつなげたいという。出雲市内を中心に計10アールほどで栽培を進める計画があり、今年秋に種をまけば、4年目には400キロほど収穫できる予定だ。

 神名火(500ミリリットル)は5千円程度、火之護(同)は2500円程度の予定で、今年7月にネットや県東部の主要観光地での販売を目指す。

 CFでの寄付受け付けは5月31日まで。目標金額は451万円で、薬草酒の開発・製造費や栽培の初期費用に充てる。

詳細は専用サイト(https://camp-fire.jp/projects/view/398410別ウインドウで開きます)。(清水優志)

私のコメント : 令和3年5月23日、江戸時代、松江藩で盛んに栽培された生薬「雲州人参(にんじん、高麗人参)」。生産者の減少などで存続が危ぶまれる中、島根大学の医師や地元酒蔵の杜氏らが復活に向け動き出している。まずは薬草酒の商品化を目指し、クラウドファンディング(CF)で資金を募っている。

高麗人参は滋養強壮などの薬効で知られる高級品で、江戸時代に八代将軍徳川吉宗が種を諸藩に配ったことから国内での栽培が始まったとされる。