占いとは? 京都・八坂と三条、2人の“母”に聞く
「あなたの運勢鑑定します」「恋愛、仕事、あなたの悩みを正しい方向に導きます」。一時期ほどのブームはないものの、繁華街を歩けば占いショップの売り文句が目に付く。人は占いに何を求め、占い師はどう応えているのだろう。京都で「○○の母」と呼ばれるベテラン女性占い師を訪ねてみた。
「『八坂の母』が健在らしい」。約25年前、八坂神社の境内に人気の女性占い師がいたと聞き、京都市下京区の住所に向かった。1階はスポーツ用品店などが入る雑居ビルの4階。扉の一つに「八坂の母」とある。恐る恐るインターホンを押すと、「どうぞー」と明るい声に招き入れられた。
宮崎悠翠さん(74)。1991年に事務所を構えた時には、八坂神社での常連客から捜索願が出たという逸話を持つ。昨年大病をして店をたたもうかと考えたが、思いの外回復が早く、もうしばらく続けることにした所だという。「そうねぇ、このごろ多い相談といえば不倫かしら。携帯電話が普及してから外に恋人をつくりやすくなったでしょう。相性が悪かったらこう言ってあげるの。『よかったじゃない、結婚してたら離婚してたかもしれないよ』って。心が傷んではる人が多いから、気持ちの持っていき方を教えてあげるのよ」。不登校や引きこもりの相談も受ける。介護中の女性から「いつまで続くのでしょうか」と疲れた声で聞かれることもある。
宮崎さん、占いって何でしょうか。「そうねぇ…。感情の指針、前を向くための手段、というところかな」。未来を知る手段ではない? 「私は当てようと思って占うわけではないの。人はみんな運気の強いときと弱い時がある。前を向いていると、開けてくるのよ」。人生相談になりかけたところでインターホンが鳴った。「あら、お久しぶりじゃない」。なじみのお客さんのようだ。
中京区の三条名店街には、今も行列のできる占い所がある。「三条の母」を自称する泰紅華さん(74)もキャリア約30年のベテラン。占いを取材していると話すと、「お役に立てたらいいのだけど」。ゆったりとした口調が返ってきた。泰さんの占いも宮崎さんと同様、誕生時の年月日や時間を柱とする四柱推命を基本としている。「やっぱり若い方は恋愛や結婚運を聞いていかれますね。友だち関係や進学の相談もありますよ」。場所柄か、若い女性の相談が多いようだ。
泰さんは華道師範でもあるが、共に占術を学んだ夫に先立たれ、生活のため占い師の道を選んだという。息子の泰志龍さんも占い師で、約100人の会員がいる府易道協同組合で理事長をしている。
占いとは何か、泰さんにも聞いてみた。「何かしらね。自分のことは占ったことがないのよ。そう、自分のことは自分で解決しますよ。だれも手伝ってはくれないもの」。ふとこの店の看板を思い出した。「運命は自分の意志で創(つく)るもの」。どこか突き放したような文句といい、悩める人に気づきを促すのが泰さん流のようだ。
・・・ 2017年03月26日、京都新聞 17時00分 配信より
私のコメント : 「 私は当てようと思って占うわけではないの。 人はみんな運気の強いときと弱い時がある。前を向いていると、開けてくるのよ 」。 「 運命は自分の意志で創るもの 」。