阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で22日開幕した第85回記念選抜高校野球(日本高校野球連盟、毎日新聞社主催)で初のセンバツに臨んだ岩国商はこの日の第2試合に登場、履正社(大阪)を1-0で降し、2回戦にコマを進めた。五回に三塁打を放った横田啓樹選手(3年)が相手の暴投の間に本塁を突いて先制、左腕・高橋由弥投手(3年)も粘り強い投球でピンチを切り抜けるなど、全員野球で手にしたセンバツ初勝利。岩国商は大会第6日の27日、山形中央(山形)戦に臨む。【蒲原明佳、川畑さおり】
 
 ▽1回線
岩国商
  000010000=1
  000000000=0
履正社
 
「そーれGANSHO!」。青い帽子の全校応援団とOBらの大きな声が三塁側アルプススタンドに響いた。24日から12年ぶり12回目の選抜大会に出場する同校ハンドボール部も、静岡県の会場に向かう途中、応援に駆けつけた。寺岡郁美主将(3年)は「団体競技は最後まで何があるか分からない。諦めない野球部の試合に、勇気をもらいたい」。相手は秋の大阪大会優勝校。それでも選手たちは「ピンチもチャンスも楽しんでやろう」と試合に臨んだ。五回、先頭打者の横田選手が勝負強さを見せる。直球を狙ってフルスイング。打球は左翼線を抜けて三塁打に。相手投手の制球の乱れで1死満塁。横田選手は暴投が出ると、本塁に走り込んだ。父雅晃さん(43)は「『楽にやれよ』と送り出した。一本が出てよかった」。しかし後半、高橋投手の球が浮き始める。七回には先頭打者に中前打を浴び、四球と内野安打で1死満塁のピンチ。「甲子園はずっと親子の夢だった」という高橋投手の母仁美さん(53)。祈るようにマウンドを見守った。「とにかく抑えて」次の打者は粘って8球目をたたいたが、打球は高橋投手の前に落ち、栗栖徹捕手に送られた。ツーアウト。マウンドに駆け寄った栗栖捕手は「それがあるぞ」と声をかける。ポケットに忍ばせた仁美さん手作りのお守り。頬が緩んだ。後続を中飛に打ち取り、ピンチをしのいだ。九回2死。「あと1人」「頑張れ!」。声援がさらに大きくアルプススタンドに響く中、ゆっくりと落ちてきた球が、中村総一郎中堅手(同)のグラブに収まった。27年ぶりの甲子園で見せた粘りの岩商野球。大きな自信を手にしてスタンドに礼をするナインの目に涙が光った。

 ◇チュウちゃん応援
 ○…岩国商の応援タオルには、ネズミがスイングする姿が描かれている。中内(ちゅうない)博和監督が岩国商で新米教諭だった頃の教え子、山崎朋子さん(31)=岩国市=がデザインした。当時、10歳ほどしか年が違わない監督を女子生徒が「ちゅうちゃん」と呼んでいたことから絵柄を決めたという。依頼は野球部OBからだったが、元ハンドボール部の山崎さんにとって野球部は、厳しい練習を夜遅くまでしていた「仲間」。「タオルと一緒に勝ち上がって」と声援を送る。
 ◇大声で勝利の校歌 教職員ら、テレビ画面に声援
応援団を送り出した岩国商では、同窓会の菅野克己会長や福田輝久教頭ら計7人が、校長室でテレビ画面に声援を送った。「甲子園組」と同じ青いジャンパーを着た菅野会長らは、青のメガホンを打ち鳴らしながら画面に見入った。高橋投手が最後の打者を打ち取ると校長室にはバンザイの声が響き、勝利の校歌を画面の選手らと共に大声で歌いあげた。菅野会長は「体調を崩して初戦は居残りになったが、勝利を信じていた。甲子園のメーンポールに揚がる校旗を見て、よくやってくれたとしみじみ思う。ありがとう。2回戦には応援に駆けつけたい」と笑顔。福田教頭は「岩商魂の勝利。選手一丸の勝利だ」と話していた。【大山典男】
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 ■白球
 ◇みんなが一つで楽しく--清水功平外野手=3年
センバツ開幕まで2週間を切った9日の練習試合。盗塁を狙っていた一、二塁走者が目に入らず強振、チャンスを消した。「自分が打つことしか考えていなかった」。「自分勝手」と中内監督から怒られた。怒られたのはプレーだけでなく日常生活のこともだった。チームのウオーミングアップのリーダーだが、授業では居眠りすることも。その頃、学習委員長で控えの安川久輝選手(3年)からは「グラウンドでだけ全力でも、応援されない。リーダーやのにそれでみんながついてくるか?」と言われていた。リーダーとしての自分を一晩見つめ直し、監督にリポートを提出した。勝ち続けてきたことで置き忘れたことがあった。ベンチの仲間や1年生がいて、全員で戦っているということだった。「本気で言ってくれたことに本気で答える」。そう決めた。まず、ウオームアップへの取り組みを見直し、本気になった。自然にチームメートの声も大きくなり、緩みも見られたチームに緊張感が戻った。初めての大舞台で1点を守り切った初戦。「みんなが一つで楽しく野球ができた。まだまだ次を目指したい」 〔山口版〕 3月23日朝刊  ・・・ 平成25年3月23日(土)、毎日新聞 15時31分配信より
 
私のコメント : 岩国商 菅野同窓会会長は「体調を崩して初戦は居残りになったが、勝利を信じていた。甲子園のメーンポールに揚がる校旗を見て、よくやってくれたとしみじみ思う。ありがとう。2回戦には応援に駆けつけたい」と笑顔。福田教頭は「岩商魂の勝利。選手一丸の勝利だ」と話されたとのこと、山口県高校野球連盟会長の尽力や岩国商の校長先生、菅野克己同窓会会長、お人柄も良い福田輝久教頭先生、教員、生徒皆様による岩国商 校内一丸となって甲子園 白星を勝ち取られたことと感じ入っている。