戦後最高値に迫った円相場を巡り、市場、財務省、日銀に緊張が走っている。「なんだ、この値動きは!」「(介入)やったんじゃないか?」。11日午後4時20分ごろ、円相場の不自然な値動きに、東京都内にある大手銀行のディーリングルームが、騒然とした。戦後最高値(1ドル=76円25銭)に迫る76円30銭程度で推移していた円相場が、瞬く間に77円台前半まで急落したのだ。「日銀がレートチェックに入ったのではないか」。市場は日銀の動きを注目していた。レートチェックとは民間銀行に対して中央銀行が為替水準を問い合わせること。レートチェックが市場に伝わると「為替介入を準備している」と警戒感が高まり、その動きに乗ろうとする投機筋の大型の売買で、為替が一方向に動きやすい。円急落の動きは1分程度でストップ。一気に3円近く円相場を切り下げた4日の政府・日銀による介入時に比べ明らかに値動きが小さく、「実際には円売り介入は行わなかった」(外資系銀行)模様だ。戦後最高値の突破をうかがう市場の展開に、財務省も神経をとがらせている。野田佳彦財務相は11日午前8時過ぎ、財務省に登庁すると同時に記者団に「引き続き一方的な偏った動きが続いている。緊張感を持って、マーケットの動向を注視していきたい」と厳しい表情で市場をけん制。午前9時半、国会で菅直人首相が「しっかりと対応していく」と答弁し、やや値を下げた円相場は、午前11時過ぎに再度上昇を開始。円買い圧力は根強く、1ドル=76円台前半まで円高が進むと、財務省国際局内には「このままでは最高値を突破する」と緊張が走った。午後4時過ぎの急激な値動きの後、午後5時過ぎに委員会を終えた野田氏は「コメントしません」との言葉を4度も繰り返し、記者団をけむにまいた。だが、国際金融筋は「単独でも必要があれば(介入は)やる」と述べ、「臨戦態勢」を強調した。円相場は既に4日の介入直前の1ドル=77円台前半を突破しており、市場が次の介入ラインと意識するのが3月17日につけた戦後最高値の水準。SMBC日興証券の野地慎シニア債券為替ストラテジストは「市場関係者は疑心暗鬼の状態で取引しており、ささいな動きにも敏感に反応するようになっている」と分析。11日の急激な値動きは、やや規模の大きい円売り取引を為替介入と勘違いした投資家が、パニック的に円売りに走った可能性を指摘する。【大久保渉、坂井隆之】

 ◇増す不安 株価乱高下
8月に入って世界の株価は、上下に荒っぽい値動きを見せながら、下落傾向が続いている。米欧債務問題や米景気への強い不安を抱えた投資家が、根拠不明の「材料」にまで瞬時に反応してしまうことも一因だ。大きな振幅を繰り返して下落していく流れは、08年のリーマン・ショック時と似ているとの指摘もあり、株式市場には緊迫感が増している。米市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が9日、「13年半ばまでゼロ金利を継続する」と表明したことを受けて同日のダウ工業株30種平均は429ドル上昇したものの、翌10日には519ドル下落。今月に入って10日までのダウ工業株30種平均の下げ幅は1400ドルを超えた。FRBがゼロ金利の期限を明示したのは、市場に「金融緩和が当面続く」との安心感を与え、中長期金利を低めに誘導して緩和効果を高めることを狙ったもので、「時間軸政策」と呼ばれる。日本でも日銀が1999~2000年のゼロ金利政策で「デフレ懸念が払拭(ふっしょく)されるまで」と解除の条件を明示するなど、これまでに複数回採用されている。しかし、この効果もわずか半日しか持たず、今度はFRBが米景気認識を下方修正したことが材料視され、欧州市場から米市場へと再び株安の連鎖が始まった。10日の欧米株下落を引き起こしたのは、フランス国債の格下げ懸念だった。欧州中央銀行(ECB)は市場の不安を静めるため、今週初めにイタリアとスペインの国債買い入れを決め、即日実施した。しかし「イタリア、スペインを支えるためには4000億ユーロ(約43兆円)規模の国債買い取りが必要」(米金融アナリスト)といった分析が相次ぎ、市場ではドイツ、フランスの財政に悪影響が及ぶとの観測が浮上。「次の格下げはフランスだ」とのうわさが広がった。市場ではユーロ圏各国の国債を多く保有する仏金融大手に関する臆測も広がった。格付け会社は格下げの可能性を否定し、仏金融大手首脳は「悪質なうわさが市場を混乱させている。当局に徹底調査を求めた」との火消しコメントを出したものの、投資家の不安心理を解消するには至らなかった。11日の東京市場では、日経平均株価は一時、前日終値比200円以上下げたが、最終的には56円安にとどまった。SMBC日興証券の西広市エクイティ部長は「上値は円高が重しになり、下値は株価が100円以上下がると、日銀によるETF(上場投資信託)買いへの期待が高まって下げ渋る」と分析している。【浜中慎哉、ワシントン斉藤信宏】    ・・・ 平成23年8月11日 毎日新聞 配信より

私のコメント : 平成23年8月12日(金)の東京株式市場は、前日の欧米株の大幅高の流れを受けて、反発して始まったが、株式含み損、会計基準の問題、為替レート変動・・・・等、株価の乱高下予想について、現在も払拭されていない。