あとを引く歌(1)・・名詞の力 | ◆気になる言葉たち◆短歌と詩と

あとを引く歌(1)・・名詞の力

三十六色の色鉛筆でまず我は三十六個の風船を描く


おもしろい作品です。
「これが短歌?」と言う人もいるでしょう。
「我」ではなく「僕」であれば小学生がつくった作品だと思うかも知れません。


シンプルな表現、構成にひかれ、そして私はうなります。
この歌には表現している内容以上に伝わってくる

気分のようなものがあります。
その気分のようなものが魅力となっているようです。


その気分を導きだすものは、まず「三十六色の色鉛筆」でしょう。
「十二色」ではありません。

「三十六色の色鉛筆」という名詞の力。

心まで見えてくる名詞です。
「三十六色の色鉛筆」を目の前にしているときの気分を想像してみましょう。
かなり高揚しているはずです。
プレゼントされたもの、と想像すればなおさらです。


その気分をさらに明らかにするのが「三十六個の風船を描く」です。
三十六色の風船をひとつひとつ描いている作者を想像してみましょう。
気分はさらに確かなものになったはずです。


表現されている事物、情景は単純ですが、

我々はそれ以上のものを受け取っているでしょう。
直接的に書かれていない気分のようなもの、

それがこの歌の眼目になっているようです。



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