父、海堂慎二が刑務所に行ってからは施設で育った海堂百合だったが、幼少の頃より肩身の狭い思いを続けていた。周りからは人殺しの娘と囁かれ、当初は仲が良かった友人達も次第に離れていく。
その様子を施設のスタッフ達は見て見ぬふりをしていた。
しかし、ただひとり、夏目京子だけはどうしても納得がいかなかった。京子はひとりで海堂の父について調べようとしていた。
海堂慎二の真祖を聞こうと刑務所まで行ったが、部外者に個人情報は教えられない。
一方、百合は中学生と同じ年齢になると、ある意味牢獄のような苦しみを抱いて生きていた。
「どうして、どうして、私だけこんなに苦しむの? パパ、教えてよ…」
そして、ある日、海堂慎二が亡くなったことを知らされる。
「パパ、パパ、私を独りにしないでよ…」
百合が十六歳を迎えるころには、百合に対するイジメも絶えなかった。
ある日の夜中、11時のことである。
「麗美、さっさとこの女を縛り上げろ!」
「いや、何するの?やめてよー!」
玲香の冷たい視線が百合の身体を舐め回すように見つめる。
「こいつの服を剥ぎ取ってやれ!」
「いや、やめてよ…お願い、やめて…」
百合の悲鳴を無視するように、服を破った。
均整取れた美しい裸体が露わになる。
玲香に取って、自分より美しいものが許せなかった。
「こんな身体、ギッタギッタに傷つけてやるさ!」
玲香がカッターナイフの刃を長く伸ばした時、京子が現れた。
「あんた達、何やってるの?」
「やべ!逃げろ!」
京子は百合を解放してあげた。
「大丈夫?」
助けてくれた京子を睨みつけた。
「どうせ、私は人殺しの娘よ!」
去って行こうとする百合の手を引いて引き止めた。
「何すんだよ!離せよ!」
「ちょっと聞いて!私は貴女の味方よ!もう、ここにいてはいけないと私は思うの」
京子は百合の手を引き、事務所まで連れて行くと、財布から10万円と名詞を取り出し、百合に渡した。
「百合、よく聞いて!私はここから貴女を出すことにする。もちろん、私はクビになる。それでもいいと思っている。この人に会いに行きなさい」
そう言うと、京子は施設の外へ連れ出し、早く行くように促した。
百合は、たったひとり自分の味方がいたことに救われた気持ちになり、軽く礼をすると闇の中へ走り去って行った。
「百合さん、自分の人生を取り戻してね…」
京子は、去っていく百合の後ろ姿を見つめながら、処分が下る朝を待った…