『ドン・カルロ』(Don Carlo )はジュゼッペ・ヴェルディ作曲による歌劇。パリ・オペラ座の依頼により、1865年から1866年にかけて作曲、全5幕の歌劇として1867年にオペラ座にて初演しました。全5幕演奏時間は3時間半、「ドン・カルロ」の魅力は何層にも複雑に絡み合った権力構造と人間関係の織りなすヒリヒリするような緊張感です。
「ドン・カルロ」は破局のドラマです。重苦しい前奏曲を聴くだけでそれが分かります。
16世紀のスペインを舞台に、スペイン国王フィリッポ2世(バス/実在のスペイン国王フェリペ2世)と若き王妃エリザベッタ(ソプラノ)、スペイン王子ドン・カルロ(テノール)、王子の親友ロドリーゴ侯爵(バリトン)、王子を愛する女官エボリ公女(メゾ・ソプラノ)、カトリック教会の権力者・宗教裁判長(バス)たち多彩な登場人物が繰り広げる愛と政治をめぐる葛藤を壮大で重厚な音楽によって描いています。
「ドン・カルロ」は、対立のドラマです。誰も彼もが、誰か彼かと対立しています。
第一に、父と子の対立、フィリッポ(フェリペ2世)と息子のカルロです。大物オヤジ(大企業のオーナー社長)に対して、それを超えられないと焦る息子が反抗する(茶髪でピアス、高校中退して目下フリーター)、大物オヤジは出来の悪い息子にタメ息をついている(こんなのが跡取りで大丈夫か?)、という構図です。確かにオヤジのタメ息通り、カルロは(オペラではビョーキ男ではないにしろ)出来が良いとは言えません。
第二に、カトリックとプロテスタントの対立です。
第三に、王権と教会の対立、フィリッポ対宗教裁判長というヘビー級の対戦です。どっちが偉いのかという問題ですが、これは結論の出しようがありません。
第四に、公と私の対立です。これはエリザベッタ対カルロです。王妃として、義母としての立場からカルロに対して距離を置こうとするエリザベッタに対して、カルロは(許されないと知りながら)激しく恋をぶつけます。公の立場を守るために愛を諦めるエリザベッタと、そんなことお構いなしに熱くなるカルロ・・・。これは同時に、別の形でのオトナ(オトナは耐えることを知っていますし、その価値も理解できます)と子供(登場人物の中でカルロだけが「お子様」やってます)の対立でもあります。
第五に、エボリ対ロドリーゴ、これは言ってみれば「欲望」対「道徳」でしょうか。エボリは、権力を持つ男をその美しさで操ることで自分の欲求を満たすことに、何のためらいもない女です。フィリッポと不倫していながら、その息子であるカルロを激しく愛するというエボリは、ロドリーゴにとっては「何考えてんだ?」的不道徳女でしょう。自分の欲望に素直に生きるエボリからすればロドリーゴなんて「もっともらしいことぬかす」ムカつく堅物男でしょう。
最後に、一人の男(カルロ)を巡って繰り広げられる、愛される女(エリザベッタ)と愛する女(エボリ)の対立です。「耐える女」対「我慢できない女」といってもいいでしょう。エリザベッタにとってエボリは、愛のためには手段を選ばない「テロリスト」です。エボリからすればエリザベッタは、カルロの愛を独り占めしている憎い敵でありながら、フィリッポとの関係を考えれば間抜けな犠牲者です。カルロを愛してはいても身動きのとれないエリザベッタと、恋については百戦錬磨の自由なエボリ・・・。しかし、カルロのどこがそんなに魅力なのかなぁ?
このオペラは低音歌手のためのオペラと言っていいでしょう。作品中一番美しいアリアである「一人寂しく眠ろう」を歌うのはバスのフィリッポですし、キャラクターとして最も美しく描かれているのはバリトンのロドリーゴです。ソプラノのエリザベッタは耐える役柄ですので、音楽的には美しくても地味な印象ですが、メゾ・ソプラノのエボリは情熱の女、コロラチューラを駆使する「ヴェールの歌」とドラマチックな「呪われし美貌」という派手なアリアがありますから、彼女の方が目立ちます。
そして、キャラクターとして最も弱いのは、テノールのドン・カルロです。彼は、父王フィリッポのような大きな政治を理解できませんし、ロドリーゴのように強い信念と高い理想を持つこともできません。エリザベッタのように自分を抑え、その運命に殉ずることもできませんし、エボリのように自己実現のためには何でもするという強い自我も持っていません。彼は、許されないと分かっている恋にいつまでも悩み、深く考えることもせずに衝動的に行動し、その結果として、どんどん自分を追いつめていってしまいます。自分で自分をコントロールすることのできない幼稚な性格なのです。
http://www.youtube.com/watch?v=cQJn46YORZk&feature=related
今は亡き、カラヤンが指揮をとった1986年の<DON CARLO>第3幕のビデオを発見!!!![]()













