カラスの眼 第113話本篇
ニヤアー、大木並木のイチョウの根元で、ドングリをつついていたぼくの所へ、ニセクロ親方がやって来たんだ。「やあ、ポー、いい天気だ。」と、言いながら、親方は半年前の事を話し出した。
「確かこの辺りだったなあ、最初にポーがオレに突っ掛かってきたのは。もう半年も前の話だが、あのころはポーも、いたずら坊主の淋しがりやで、群れにも距離を置いて、独りで暴れていたが、今じゃ立派な群れの若い戦力だ。群れの皆も、お前の事を尊敬するようになった。親を殺したハクビシンやトンビへの、激しい憎しみも自分の中でねじ伏せる、一番大切な心の強さも備わった。戦いの技はまだまだだが、そんなものは、これからいくらでも鍛えられる。」
去年の夏の頃、面白半分で親方にチョッカイを出し、からかうつもりが、一瞬で、簡単に後ろに回られ、本当の戦いなら、ぼくは殺される所だった。それ以来ぼくは、尊敬するニセクロ親方の弟子になって、色んな事を教わったんだ。
「親方の教えてくれた、一番大事な事は、勝ち方だよ。争いに勝つのは、敵に勝つんじゃなくて、争いそのものに勝つ事、怒りや憎しみを乗り越えて、争いを止めるって事だ。それが分れば、勇気も湧くし、戦いの技も上達するんだ。親方の弟子になって本当によかった。ありがとございます。」そう言って、親方にお礼をしていると、バッサアー、と、コウゾー親分がやって来たんだ
「ポー、ここに居たのか、たいしたもんだ、ドングリを割るのも、上手になったな。ニセクロさん、見てくれ。ポーも立派な若い衆になった。オレがカンゴロー爺さんから、親分を継いでから、兵隊頭の役が空いたままだ。実際にはもう、その役を充分務めてはいるが、ポーを、群れの正式な兵隊頭にしたいんだが、ニセクロ親方の意見も聞いておきたい。どうかね親方。」
ええっ、ぼっ、ぼくが兵隊頭?そりゃ「いよっ、ヘータイガシラ,!」なんて、からかって言ってくれる仲間はいたけど、ぼくには全然関係ない事だと思ってたんだ。すると、ニセクロ親方が言ったんだ。
「そりゃいい、親分、よく気が付いてくれた。おれも何時言おうか、どうしようかと迷ってたんだ。言うとおり、ポーはもう、実際には立派に兵隊頭の役目を果たしているが、いかんせまだ若いこともあって、おれも言い出せずに居たが、兵隊頭が空きのままって言う、そっちの方がもっと良くない。オレは大賛成だぜ。なあ、カシラ。」
「ハイ、エッ、カッ、カシラって、ぼっぼくの事?」親分の方をみて、ぼくがそう言うと、コウゾー親分は、少しおっかない顔で、はっきりと言ったんだ。
「その通りだ。ポーが今日から、群れの正式な兵隊頭だ。
分ったな、カシラ。」
「カラスの眼」第一章 終わり
Rouzinsyounen
ご挨拶
昨年7月の、弊紙ブログ化第5紙目、ぽつう第42号から連載してまいりました、「カラスの眼」第一章、全113話は、今回をもちまして最終回となりました。
尚、「カラスの眼」第二章は、夏季よりの連載を目指し、原稿をご用意している所です。
皆様には、半年を越えての長きにわたり、ご愛読いただきました。ここに、厚く御礼申し上げます。
2017年2月3日
御愛読者各位
老人少年
「ぽつう」配信ほんぶ
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「今宵のつまみ」
「ほうれん草としらすのおろし和え」
酒肴「今宵のつまみ」百十二、 by rouchef
ほうれん草100gを茹で、
冷水で色留めし、絞っておく。
大根100g、洗って皮ごとおろし、汁もすてずに、
酢小さじ2、砂糖小さじ1/2、柚子皮(きざみ)少々と合わせ、
直ぐに食べられるが、出来れば半日おきたい。
ほうれん草も大根も
寒の今が一番旨い。
シンプルな味付けが活きる。
2017/2/3
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ぽつう
〔特集〕
別冊
2017.2.2
老シェフのれしぴ
(23)
うまうま回鍋肉
決め手は生姜香味油と蜂蜜
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さい。(^-^)/