地霊の声 篳篥とバグパイプと相撲 | 堀田はりいと猫サリーのブログ

普段、仕事と趣味でアイルランドやスコットランドなどのケルト人の国の音楽を聴くことが多い。


数年前、娘(アイリッシュ・ハープの演奏家で、教師)とアイルランドに行くことになったとき、娘の友人のイーリアン・パイプス(アイルランドのバグパイプ。イリアン・パイプスと記述する場合もある)奏者のお土産に選んだのは、東儀秀樹さんの篳篥(ひちりき)のCDだった。たまたま聴いた東儀秀樹さんの篳篥の演奏が、わたしの耳にイーリアン・パイプスの音色によく似ていると思えたのと、立ち昇る音楽の情感も不思議とよく似ていると思えたからだった。


アイルランドという国は昔も今もとてもダンスが盛んな国で、その昔、ダンスマスターと呼ばれたダンス教師はイーリアン・パイプスとフィドル(ヴァイオリンと同型の楽器だが、アイルランドの伝統音楽ではフィドルと言う)を連れて、村々を回ったという。

今日ではダンスの場での伴奏楽器としてみならず、国民的楽器として、最も人気のある楽器の地位を獲得している。実際、演奏にイーリアン・パイプスが加わると、音楽に魂が宿ると言ってもよいほど、アイルランド音楽のスピリットをぐっと高めるのである。


バグパイプは西アジア、東西ヨーロッパ、北アフリカの牧羊地帯で広範に普及している楽器である。そのご先祖様は、紀元前3000年の頃からエジプトなどで使われていたダブル・リードのダブル・パイプ(双管)のズマラと言われている。この笛を吹きやすくするために袋つきに改良したのが、つまりバグパイプというわけだ。このズマラという楽器は篳篥を二本くっつけたような文明発祥の地の楽器なのである。


ご存知の通り、篳篥の姉妹楽器はシルクロードに沿って、中国、韓国、そして極東の日本にまで見事に連なって分布している。篳篥は和楽器の中で、もっともシルクロードの香りのする楽器と思うのだが、如何だろうか?


篳篥は「地を行く人の声」をあらわしていると言われている。言うなれば「地霊の声」である。

モンゴルの力士は本来、土地神である。また日本の力士は本来、神になり、四股を踏む所作で、邪気を祓い、大地の豊穣を祈願する。篳篥もモンゴルの相撲も日本の相撲も、関わる世界は霊的な大地で通じ合っている。


長く伸びる低音を出すドローンという笛を持つイーリアン・パイプスは、大地をも揺るがすほどの響きを低く持続させる。その響きはケルト人の魂のみならず、多くの人々の心を揺り動かす。地霊の声の篳篥と大地をも揺るがすバグパイプは、それぞれ人の魂を揺り動かす響きを内に持っている楽器と言えよう。


ちなみに、バグパイプは、メソポタミアの一角に発し、ケルト族の移動などとともに、東西に拡められたと推定されている。


「東遊伝」では、今日、5月4日という日は特別な日である。主人公がどんたく祭りで賑わう福岡に到着する前から不思議な映像を見たりする。物語はここから始まると言っても過言ではない。


(写真は楽器のズマラ)    

   古代歴史ファンタジー小説「東遊伝~鷹王と八百万の神々」の著者のブログ-zummara

「東遊伝~鷹王と八百万の神々」サイト
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