まもなく術後5か月。海外出張に行ってきた。ずっと行きたかったし、先方からもおいでよ、と言ってくれていた場所に、ようやく行くことが出来、感無量だった。先方では、私よりずっと若い参加者とも、同年代の参加者とも、たくさんおしゃべりをし、意見交換し、刺激を受けて帰ってきた。

旅の途中でも、至るところで友達が出来た。すき間時間に訪れた劇場の隣の席の同年代の女性。電車の隣席の、こちらも同年代の女性。名所で写真を撮っていたら中に招き入れてくれた、そこにお住まいの紳士。かの国の人々は本当にフレンドリーで親切だ。

かつて一時期を過ごした街にも、足を延ばしてきた。懐かしかったが、すっかり変わった面もあった。一方で、何百年と変わらない風景は、きっちりそのままに保存されていた。とても不思議な気持ちだった。

 

出張のあいだ、乳がんのことをほとんど忘れていた。何百ページもの資料を読むのに忙しく、放射線を当てたところに保湿剤も塗らなかったし、毎晩のようにやっている局所再発のチェックも全くやらなかった。ついでに、薬を忘れて行ったので、ずっと薬も飲まなかった。体調もよく、癌などまるでなかったかのような気がして、とても幸せな気持ちだった。

やはり私はあの国が好きだ。もう一度行けたら死んでも悔いはない、などと思っていたけど、ひとたび行くと、また行きたくなる。