術後3週間近くたっても痛みで動けないことが情けなく、無事に社会復帰できるのか心配で鬱々としていた2月、「春になったら〇〇をしよう」と、いくつか小さな目標を立てることで自分を保っていました。そのうちの一つが「京都の桜を見る」というものでした。その自分との約束を、今日、実行してきました。

 

今日は息子の入学式だったのですが、放射線治療のため、私だけ途中で抜けて病院に向かわなければいけませんでした。時間の制約がある中で、無理やり京都に行き、なんとか長蛇の列のタクシーに乗り、運転手さんに

「ご無理を言って恐縮なのですが、10分で行ける桜の名所に連れて行って下さい。写真が1枚撮れれば満足なんです。30分で京都駅に戻ってこないといけなくて。」

そうお願いしました。

「実は、冬の間ずっと病気をしていて、春になったら絶対京都の桜を見たい、って思ってたんです。今日、見ておかないと、雨で散ってしまうから。」

 

私の切羽詰まった様子を感じ取ってくれたのか、運転手さんは、うーん、と少し考えて、鴨川沿いに連れて行ってくれ、少しだけ車を停めてくれました。

鴨川沿いを北上する道の、左右の桜の美しかったこと。

そして、木屋町の桜吹雪の中、車を走らせてくれた数分間を、私は一生忘れないでしょう。

 

親切な運転手さんは、後部座席で私が泣いているのを察し、「今年は良い年にせなあかんな。」と言ってくれました。

そして「来年はゆっくり見においで。周りも心配してるやろから、しっかり直さんと。」とも。

運転手さん、ありがとう。このようにして人の優しさにふれながら、乳がんとともに私の人生は深まっていくのだと感じました。