8・15在福岡韓国領事館前“ベトナム反戦像”設置にあたっての韓国向け声明 | 我々少数派

8・15在福岡韓国領事館前“ベトナム反戦像”設置にあたっての韓国向け声明

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 8月15日、福岡市早良区にある韓国領事館前の路上に、「九州ファシスト党〈我々団〉」として、“ベトナム反戦像”の設置を試みる。

 以下はそれに際しての韓国向け声明である。もちろん韓国語への翻訳も知人に依頼しているが、当日までに間に合うかどうか微妙。

 当日、人数は多ければ多いほど良いと思うので、駆けつけられる者は正午に現場に駆けつけるべし。

 

          ※          ※          ※

 

 みなさんが韓国内の日本大使館・領事館の前などにいわゆる「従軍慰安婦像」を設置していることを念頭に、私たちは2017年8月15日、私たちの住む地域(福岡市)にある韓国領事館前の路上に「ベトナム反戦像」を設置することを試みます(日本には言論の自由がないので、実際には設置できないと予想していますが)。

 この試みには、みなさんの「従軍慰安婦像」への対抗や抗議の意図は(まったくなくはありませんが)稀薄で、真の意図は別のところにあります。

 近年の日本で隆盛している“反韓・嫌韓”の諸団体・諸運動の状況についてはかなり詳しく伝わっていることと思いますが、日本国内のいわゆる「自虐史観」については、どの程度みなさんに伝わっているのでしょうか?

 「自虐史観」とは、日本の歴史学で主流をなす、自国の歴史を卑屈なまでに批判的に描く傾向に対して、“反韓”や“反中”を掲げる日本の自称“愛国者”たちが貼りつけたレッテルです。おそらくみなさんに伝わっている印象とは異なって、日本ではむしろこの「自虐史観」派のほうが圧倒的に主流で、これに対抗する形で90年代後半以降、“反韓・反中”を掲げる少数派の諸運動が表層的に目立つようになり、目立つので少数派なのに大々的に報道されたりするようになっているのです。

 「自虐史観」では当然、近代において日本が韓国をはじめ近隣諸国に対してなした一連の侵略的な政策についても厳しく批判的に描かれるのですが、実は日本で現在おこなわれている歴史教育でもそういった「自虐史観」的なもののほうが主流で、学校教育で使用されている歴史教科書に関しても同様です。“反韓・反中”を掲げる自称“愛国者”たちが90年代後半以降、非「自虐史観」の“愛国的”な歴史教科書を作って広めようとしており、そのことはみなさんにもよく伝わっているでしょうが、彼らの教科書の学校現場での採用は、現在でも数パーセント程度です。

 もっとも「自虐史観」は日本に特有のものではなく、先進国に共通の傾向で、例えばアメリカでも60年代末以降、それまでのアメリカが先住民や黒人にどれほど酷い振る舞いを繰り返してきたかを反省的に検証するような歴史観が主流になってきましたし、それは近代史において非ヨーロッパ地域を侵略・収奪してきた過去を持つヨーロッパ先進国においても同様です。そしてこれら先進国の「自虐史観」は、まさに60年代後半の「ベトナム反戦」運動を契機として登場し、広まり、やがて定着したものでもあります。日本でも、「ベトナム反戦」以前の日本の反戦運動は、支配者の勝手な都合で悲惨な戦争に巻き込まれるのは2度とイヤだという“被害者視点”でのものがほとんどだったのが、ベトナム戦争で、アメリカの不正義な戦争に協力する日本はベトナムに対して加害者ではないか、という問題意識が急速に広がって、反戦運動は“加害者の自己批判”の側面を強く持つようになり、その延長線上にまもなく、そもそも第二次大戦でも日本は朝鮮や中国をはじめとする近隣諸国に対して加害者だったではないか、とくに朝鮮に対しては明治維新以降ずっと加害者であり続けてきたではないか、さらに振り返れば豊臣秀吉の朝鮮出兵も古代の白村江の戦いも侵略だし、朝鮮に対してのみならず琉球やアイヌといった日本列島内の異民族に対しても……という本格的・総合的な「自虐史観」が急速に形成され、少なくともアカデミズムの世界では主流となり、当然にもアカデミシャンたちが主導する学校教育にも浸透していったのです。

 ともかく今や「自虐史観」は先進国共通の一種の“たしなみ”となっています。

 ひるがえって韓国ではどうでしょうか? 少なくとも日本に伝わってくる範囲では、みなさんには今なお「自虐史観」の“たしなみ”が欠けているように思われます。みなさんはいつも“被害者”で、悪いのは日本だ、中国だ、ロシアだといった自国中心主義史観、“自尊史観”は、発展途上の後進国にこそふさわしいものです。そこから脱却しないことには、みなさんの国はいつまでたっても真の先進国にはなれない、日本のような二流先進国にさえ少なくとも文化的には追いつけないでしょう。

 今回、韓国領事館前に「ベトナム反戦像」の設置を試みる私たちのグループは、“反韓・嫌韓”を掲げる人々とも多少の親交は持ちつつ、さまざまな部分で距離をおいて活動している一派です。私たちは、みなさんが韓国内の日本大使館・領事館前などに「従軍慰安婦像」を設置していることに対して、不快感を持ってもいますが(外交的に失礼なことだと思います)、むしろみなさんが今なお“被害者史観”から脱却できない後進国民である現実を見せつけられて、憐れみの感情を抑えきれません。そして同時に、そのことの責任は、朝鮮の近代化を阻害してきた(日本の自称“愛国者”たちが云うように、日本による独特の植民地政策はむしろ朝鮮半島の近代化を助けた側面があるのですが、それはつまりみなさん自身の努力による自主的・自立的な近代化の機会を奪ったということです)私たち日本人にもあるのではないか、と先進国民なので自虐的に自らを責め苛んでいます。

 私たちは先進国の先輩としての責任感から(あるいはみなさん自身の努力によるまっとうな近代化を阻んだことへの罪悪感から)、みなさんにも早く先進国民らしい「自虐史観」をたしなんでいただきたく、その一助として、「ベトナム反戦像」をプレゼントするものです。韓国はベトナム戦争に際して何をしましたか? 韓国は近代において常に“被害者”でしたか? 韓国はベトナムで「従軍慰安婦」に似た類の愚行をおこなっていませんか?

 もちろん私たちは、かつて日本が朝鮮や中国をはじめ近隣諸国に対しておこなった一連の侵略行為を正当化するものではありません。しかし多少の云いぶん、あるいは“みなさんにも考えてほしいこと”はあります。そもそもの元凶は、私たちの東アジアを含む非ヨーロッパ地域を次々と植民地化していった欧米列強であったはずです。例えば日本も中国も朝鮮もこれに対抗しなければならなかったことは自明でしょう。本来なら私たちは一丸となって欧米列強の侵略に対抗すべきところ、当時のそれぞれの国情で、対抗に打って出ようとするタイミングがズレてしまい、もともと中華文化圏の最後進国であった日本がなぜか先頭に立つことになって、慣れないもので多くの過ちを犯し、みなさんにも筆舌に尽くしがたい辛酸を味わわせてしまいました。そのことは否定しませんし、私たちは私たちでよく反省します。しかしみなさんはみなさんで、ではなぜ自分たちが率先して欧米列強の侵略に対抗することを始められなかったのか、「日本が悪い」で済ませてしまっていいのか、さらに云えば、もし仮にみなさんが中国や日本に先んじて近代化に成功していたとしたら、みなさんが中国や日本に対して、日本が中国や朝鮮に対しておこなったのと同じこと、あるいはもっと酷いことをおこなった可能性はないのか、要するにじゃあ本来は中国・朝鮮・日本はあの時どうすべきだったのか……等々について深く考えていただきたく、今回の「ベトナム反戦像」がそのきっかけの一つとなることを願っている次第です。

 

          2017年8月15日 九州ファシスト党〈我々団〉

                    総統・外山恒一