外山恒一の「学生運動入門」第15回(全15回) | 我々少数派

外山恒一の「学生運動入門」第15回(全15回)

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 現在、外山恒一は「全国ツアー」と称して各地を行脚しています。直接いろんな話を聞きに行きましょう。詳しくはコチラ


 最後に、直接に私自身の利益(?)にも結びつくようなアイデアを提示しましょう。
 それは、私を大学に呼べというものです。
 「外山恒一」の知名度は、むろん〇七年の都知事選直後に比べればかなり落ちてはいるでしょうが、現在でもそこそこ維持されています。今の学生でも、十人か二十人に一人は私のことを知っていると思われます。もしかしたら、私と違ってここ数年さまざまのメディアに露出するようになった雨宮処凛や松本哉よりも、単に認知度だけで云えば今だに私の方がまさっているかもしれません。もちろんそれは私の思想や行動へのマジメな興味を伴うものではなく、「ニコ動とかでよくネタにされてる変なオッサン」ぐらいのものであるとしてもです。
 学外から誰かを呼んでイベントをやる際に、まずこの「知名度」の問題はかなり重要でしょうが、私の場合はさらに、また引き合いに出しますが雨宮処凛や松本哉とは違って、認知度が特定の層に偏っていない強みがあります。松本哉や雨宮処凛を知っている学生は、もともといくらか政治的・思想的・運動的な方面に興味関心を抱いている学生だと思われますが、私の場合はそうではなく、むしろ非政治的なミーハー層が多い。にもかかわらず、さらに云えば私は松本哉や雨宮処凛と違って、実はかなり正統派の人文系インテリですから、大学という場にふさわしい、多少は学問的の匂いのする議論にも対応できます。これはもう、呼ぶしかありません。
 私を大学に呼んだとして、とりあえず興味本位・物見遊山で話を聞きに集まってくるのは、政治的・思想的な問題意識の有無はさておき、少なくともヘンなもの、危なっかしいものに興味をそそられるアンテナは持ち合わせている学生たちでしょう。要するにみなさんは、そういう学生たちをおびき寄せるエサとして私を利用してくれればいいのです。私は学内に一時的に数時間だけ闖入するにすぎませんが、その場はとりあえず面白おかしく〝運動〟バナシをやって盛り上げます。そこで生じた熱を維持し、つまり集まった学生たちを学内の何らかの〝運動〟の仲間としてイベント後もつなぎ止めていくのは、ひとえにみなさんの側の努力にかかっていますが、私がそのきっかけとして寄与することはできると思います。
 ちなみに以下の条件で、私を大学に呼ぶのにとくに謝礼等は要りません。
 私の〝講演〟は、冒頭に一、二本(例の「政見放送」と他に何か一つ)動画の上映をした後は、最初から最後まで来場者からの質問に答えるという〝質疑応答〟スタイルです(「京大熊野寮講演会」動画参照。「外山恒一、熊野寮」で検索すると出てきます)。司会役の学生を置いてもらってもかまいませんが、他にゲストは不要です(他にゲストを呼んで対談やシンポジウムのような形態としたい場合は、その人選に私が関与しないかぎり交通費と謝礼をお願いします)。
 私は毎年、何ヶ月か全国各地を放浪しています。その期間に合わせて呼ぶのであれば、交通費も不要です。私が放浪するのはだいたい六月から7月にかけての時期ですが、春休みぐらいの時点で日程を決めて予約(?)してもらえれば、逆に私の側がそれに合わせて全国放浪の日程を組むこともできます。ただ、呼ぶからには少なくとも一ヶ月前ぐらいの時点から、学内できちんと告知活動をしてもらわなければいけません。事前情宣をきっちりやってくれることを前提に、無料で全国各地の大学に出張します。
 全国放浪をしている以外の時期に呼んでくれてもかまいませんが、その場合は交通費のみ出してください。飛行機は怖いんで、新幹線でお願いします。私は福岡市在住なので、博多駅からの往復交通費となります。
 またこれらは九州以外の大学についてのお話です。九州内の大学に私を呼ぶ場合には、逆にこの全国放浪以外の時期にしてください。沖縄を除き、九州内の大学になら(むろん事前情宣をちゃんとやってもらう前提で)常に交通費ナシで出張します。
 また私が無料で(全国放浪期以外は交通費のみで)行くのは、学生が学内でやるイベントに呼ばれた場合だけです。最初に述べたように、学生運動の再建こそ現在の最も枢要な課題だと私が考えており、それに寄与できるのであればそれ自体が私の利益であるからです。九州外では、学生以外の主催によるイベントや、学生が主催するとしても学外でやるイベントには、無料では行きません。
 もちろん、私を大学に呼ぶことにはそれなりのハードルがあるでしょう。事前情宣をちゃんとやってもらうのが条件、ということは、それが公然イベントでなければならないということです。つまり、私を呼んで学内でイベントをやることを当局に容認させなければなりません。
 学生が勝手に使用できるスペースがあり、かつそこでやるイベントの告知(ビラの掲示やタテ看の設置など)まで自由にやれる大学など、現在ほとんどないはずです。したがってまず会場を確保するために当局と交渉する必要があるでしょう。しかも私は、大手メディアにもたびたび登場する雨宮処凛や松本哉と違って、あらゆる見地から見てひたすら怪しい人間ですから、そんなのを学外から呼んでイベントをやることに当局が難色を示すことは大いに予測できます。活動家としてのあなたの手腕が問われるところです。会場を確保できれば、多くの場合はその時点で当局に容認されたことになるでしょうから、当局が許容する範囲で、学内の掲示板などへのビラの掲示などは可能になると思いますが。
 正攻法で難しい場合には、前にも書いたように誰か教授を味方につけることでしょう。教授に会場を確保してもらい、その教授の講義で受講者にビラを配布させてもらうことぐらいはできるかもしれません。また会場確保に動いてくれた教授以外にも、少なくとも理解を示してくれる教授を他に幾人か見つけて、その人たちの講義でもビラを配布させてもらいます。
 あるいは、通常のサークル活動には多少の自由が認められている大学であれば、自分や友人が所属するサークルの名義でイベントを主催し、会場を確保することも可能かもしれません。サークル棟の中に会議室や練習室などの大部屋があり、そこを使用するぶんには必ずしも当局の公認を必要としない場合もあるでしょう。事前情宣は、上記の例と同じように、幾人かの教授を味方につけてのゲリラ的なビラ配布などになるでしょうが。
 ともかく、本来は学生が学外から誰かを呼んでイベントを開催するという程度のことが自由にやれない現在の大学状況そのものがメチャクチャなのです。六〇年代どころか、八〇年代でさえそんな大学はありませんでした。……と嘆いてるだけでは始まらないので、この異常な大学状況を前提として、地道に突破口を開いていくしかありません。実現できるかどうかはともかく、「外山恒一を大学に呼ぶ」つもりでいろいろと試行錯誤すること自体が活動家としての経験値を上げていくことになるでしょう。これまでのところ、学園祭関連企画として以外でこれに成功したのは京都大学と法政大学だけで、いずれもかなり特殊なケースです(いずれも全共闘以来の学生運動がまだ存在しているか、最近まで存在していた大学で、学生自治がおこなわれている京大熊野寮での「外山恒一講演会」の場合には当局との交渉など経てさえいないでしょう)。例えば新潟大学や北海道大学では当局の承認を得られず、学内での開催は実現しませんでした。当局公認ではないゲリラ的な手法であったとしても、もし(事前情宣つきで)呼ぶことができれば、それだけであなたはかなり優秀な活動家だという証明になりそうなくらいです。

 私はまあ、自分でわざわざ云うまでもなく、それなりに豊かな発想を持つ活動家ではあるだろうことは、これを読んでいるみなさんも認めるにヤブサカではないでしょうが、ひとたび〝運動〟の世界に足を踏み入れれば私と同等かそれ以上にその種の才能を発揮し始める人も潜在的にはけっこう存在しているに違いないと私は思っています。私や松本哉は、活動家になる人間がそもそも少ない世代の中で突出しているにすぎず(もちろんそれはそれで我ながら偉大なことです)、分母が大きければ我々程度の〝アイデアマン〟はもっとたくさん出てくるでしょう。
 したがって今回私が提示したようないくつかのアイデアは、本当にそれなりの規模で学生運動が復活した時には「たいしたことねーな」と一笑に付されるかもしれない恐怖におびえながら期待しつつ、この「学生運動入門」を終わります。