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橋下氏は「危険を感じるほどの演説の天才」-橋下政治8年間を「言葉」で検証するドキュメンタリー、MBSで31日深夜放送
「2万%ない」「既得権益を破壊する」「クソ教育委員会」…。8年間に及ぶ政治生活で、橋下徹氏が発した言葉はどれも刺激的で挑発的だ。“橋下政治”の本質を検証するMBSテレビのドキュメンタリー番組「映像’16『テレビの中の橋下政治~“ことば”舞い散る8年』」が、31日深夜、放送される。“橋下政治”とは何だったのか-。橋下氏が操る「ことば」に焦点をあてて8年間を振り返る。(杉山みどり)
「言葉」抜きには語れない
橋下氏は平成20年、「2万%ない」という前言を翻して大阪府知事選に出馬し初当選。「大阪府は破産会社同然」と切り込み、役所や公務員と対立して府政改革を推し進め、「敵か味方か」「損か得か」という二者対立の構図、弁護士ならではの巧みな演説で支持をさらに集めた。22年には「大阪都構想」を掲げ、大阪維新の会を発足、大阪府知事を退任し、大阪市長選に出馬。都構想の実現に向け奔走した。
MBSは、そんな橋下氏の8年間を収めたテープ約3000本、約1500時間から橋下政治の本質に迫る「言葉」をピックアップし、検証するドキュメンタリー番組を制作した。
《タレント弁護士で情報番組のコメンテーター出身の橋下氏だけに、テレビは連帯感を持ったかのように大量の報道を続けた。その「民主主義」や「言論の自由」「地方分権」などは次第に本来の意味から離れていくが、メディアは橋下氏の「言葉」の小気味よさに踊らされ、本質を検証してこなかった。しかし、そうした関係性も崩れるようになる。批判されれば恫喝、時には「だからマスコミはダメなんだ」とメディアに責任を転嫁するようになっていった…》
澤田隆三プロデューサーは、ドキュメンタリーの制作意図についてこう話す。
「“言葉”で大衆の心をつかむのは政治家の中でも抜きんでている。橋下氏の言葉を抜きに、政治家・橋下徹を語ることはできない。番組を見た人がそれぞれ、この8年間について考えてもらう材料になればいい」
「聞きたいことを言う」演説の極意
知事選で橋下氏に密着した映像もある。同局の報道記者に演説の極意を尋ねられると、橋下氏は「しゃべりたいことを言うのではなく、聞きにこられた方の聞きたいことを言うようにする。ふわっとしていてわかりにくくても」と答える。
WTC(大阪ワールドトレードセンタービルディング)への府庁移転条例案が府議会で否決された時には、「この日本は北朝鮮じゃないってこと。僕の思い通りに物事を進めることができたら独裁者になってしまう」、市長選に出馬した際には「独裁ですよ。日本の政治に必要なのは独裁」と言い放つ。
「慰安婦発言」に対する批判に関しては、マスコミの「大誤報だ」と言い、その言葉に異議を唱える同局記者に対する返答には“立場の入れ替え”という論法でまくしたてる橋下氏の姿が映し出される。
こうした橋下氏の言動を読み解くカギのひとつとして、同番組では橋下氏の著書「図説 心理戦で絶対負けない交渉術」をあげる。その表紙には「言い訳、責任転嫁、あり得ない比喩、立場の入れ替え、前言撤回 どんな相手も丸め込む48の極意! 思い通りに相手を操る非情の実戦テクニック!!」と記載されている。
「まさに演説の天才ですね。危険を感じるほど」と澤田プロデューサー。
同じ言葉のプロ・きみまろさんも感嘆「すごい人だね」
漫談家・綾小路きみまろさんのナレーションもいい。「きみまろさんも言葉のプロ。橋下さんの言葉ときみまろさんの言葉の対比も面白いと感じ、お願いしました。あまりテレビには出られない方なのですが、今回のオファーは快諾してくださいました」と、津村建夫ディレクターが話す。
きみまろさんも、「すごい人だね。こういうやり方しないと物事って進まないんだね」と言っていたという。
橋下氏は、カリスマ政治家だったのか、はたまた稀代のペテン師だったのか。大阪を翻弄した橋下氏を考えるきっかけとなる番組だ