岐伯は言いました。

 

「王様がおっしゃるとおり、

人の経脈はいつも流れていて止まりません。

それは、天だけでなく、地の法則とも合っています。

まず、それをお話させてください。


天の太陽、月、星が空を移動する軌道を間違えれば、

日蝕や月蝕※になります。

地の水の流れが異常になれば、

水が溢れて洪水になり、

草は成長せず、五穀は実らず、道は通れなくなり、

人々は行き来せず、横道に集まり、小さい村に居て、

他所との交流は無く、ばらばらになります。

 

人のは周って流れて休まず、

天の二十八宿の星に応じていて、

地の十二の川(霊枢12)の水流に応じています。

では、もし、血脈、営気、衛気が、

天の太陽や月のように通る所を間違えたり、

地の川のように溢れたらどうなるかを

お話しましょう。

 

寒邪が経絡の中に居座ると、

血がほんの少ししか通れなくなるので、

衛気も体をめぐってまわることが出来なくて、

癰の出来物ができて腫れます。

 

寒邪はやがて熱と化してます。

熱が強くなると、肉が腐り、膿となります。

出来物の中の膿が排出できないと、

筋がただれて、骨が傷んで、髄が消失し、

骨の空洞になった所に入ってしまった膿は排出できません。

やがて血が枯れて虚となり、

筋骨肌肉はどれも衰えて、経脈は満たされず、

五臓は枯れます。

そして、五臓が傷つけば、死ぬのです。」

 

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※日蝕と月蝕

古代、太陽が消えるのは、

強い陽気を陰気が侵していると考えました。

これは、君主に過失があることを天が告げているので、

急いで対処しなければ、国が亡びるとされました。

いっぽう、月は女王、大臣や諸侯に当たると考えられて、

月が消えたり、色が変わったりするのは、

どこかに良くないことがあるからだと考えられていました。

いつ日蝕や月蝕が起こるかは、

中国古代天文学でも、かなり昔から予測できていたようです。