王様は言いました。
「どういうことだ?」
岐伯は言いました。
「目というのは、
五臓六腑みんなの精気が上って注ぎ入ることによって、
視える力となりますので、
精の集まる所が、目です。
腎の精は瞳となり、
肝の精は黒眼となり、
心の精は眼内にある血脈となり、
肺の精は白眼となり、
脾の精は瞼となります。
肝・腎・心・肺の精がまとまると、
脈と合わさって、目系になります。
目系は、目の根元の経脈で、(霊枢21)
上は脳へつながり、後ろは項の中へ入ります。
ですから、
邪気がうなじに当たって、
虚している所から体に入って、深くまでいれば、
目系に付いて行って、脳に入ります。
腦に邪気が入ると、脳がぐるんと動きます。
脳がぐるんと動くと、目系が引っ張られて引き攣るので、
眼が眩んでぐるんと動きます。
そして、邪気が目の精気にぶつかってくっつくと、
精がバラバラになって、視る力もバラバラになります。
視る力がバラバラになると、物が二つ見えます。」
王様は言いました。
「それで、どうして私は
高い所で目がくらんだのだ?」
岐伯は言いました。
「目は五臓六腑の精が入る所で、
いつも、営気と衛気、魂と魄が、集まっています。
瞳と黒眼は陰、白眼と血脈は陽であり、
陰と陽が合わさることで、はっきり見えます。
また、目は心の指図を受けています。
心は神気が舎する所で、神気の生じる所なので、
神気が疲れると、魂魄が散じ、志意が乱れます。
神気が乱れると、見る力が伝わらないために、
急にいつもと違う状態が目に現れたのは、
精神魂魄が散らばって、調和できなくなったために、
眼が眩んではっきり見えなくなったのです。」