岐伯は続けて言いました。
「体の上半身が冷えて、下半身は熱なのは、
まず項部分の足太陽膀胱経に鍼を刺し、しばらく留めます。
そして、鍼を抜いた後に、項と肩甲部分に熨をして温めて、
上半身の体温が下半身とつり合うと、
病は治ります。
これは、いわゆる、推し上げる、です。
体の上半身が熱で、下半身が冷えなのは、
虚になっている脈を見つけて、経絡が凹んでいる所に鍼をすれば、
熱気が下まで行って、病は治ります。
いわゆる、引き下ろす、です。
ひどい高熱は、
体をまんべんなく熱くします。
狂うと、
ありもしない物を見て、
無い音が聞こえて、
訳の分からないことを口走ります。
治療には、足陽明膀胱経と大きい絡脈をよく診て、
場所を決めて、鍼を刺します。
虚であるものは、補し、
血絡があって実なのは、寫します。
そして、病人に腹ばいに寝させて、
医者は顔の前側に居て、
両手の四本指で病人の頚をはさんで、
人迎大迎の動脈を按じながら、
じっとしばらく当てて持ちます。
軸を中心にくるくると回し、
ぴったりとひっつけて押していき、
下方の缺盆の中まで至らせるのを、
繰り返してから、止めます。
そうすれば、熱が去って、病が治ります。
これはいわゆる、推して散ずる、です。」