王様は言いました。
「さすが、岐伯は私が知りたいことをすぐに教えてくれて、
素晴らしい先生だ。
今、話してくれたような病では、
どの場合も、病になる理由に自分で気づくと思うのだ。
そうではなく、
邪気にあっていなくて、
心も悩んだり心細かったりしないのに、
急に病になるのは、なぜなのだろうか?
もしや、鬼神が原因なのではないか?」
岐伯は言いました。
「いいえ、王様、
この場合にも、すでに邪気は入っているけど、まだ病ではなかったのです。
そのような状態の時に、
心が嫌なことで悩んだり、うらやむ気持ちがあったりすると、
体の中で血と気が乱れます。
この乱れた気と、潜んでいた邪気が、互いにぶつかり、
病の始まりとなるのですが、
その変化が現れるのはとてもわずかで、
見ようとしても見えないし、聞こうとしても聞こえません。
そのため、まるで鬼神かのように思えるのです。」
王様は言いました。
「でも、祝由の治療法の歌を聞かせるだけで、
病が治る人がいるのだろう?
あれは、鬼神を鎮めているのではないのか?」
岐伯は言いました。
「祝由は、古代医学の十三科のうちの一つです。
(祝由、内科、小児科、婦人科、皮膚科、鍼灸、
眼科、歯科、咽喉科、接骨、感染症、外傷、按摩)
古代、巫が歌によって人を治せていたのは、
巫が、全ての病の抑え込み方を知っていたからです。
どんな病でも、どのようにして、病の生じたのかを知っていたので、
祝由で治すことが出来たのです。」
以前、昔の人の病が祝由だけで治ったのは、
昔の人が欲張らず正しい心で暮らしていたからとありましたが(素問13)
巫の方々の医学知識も素晴らしかったようです。
(王様と人を病にする風 終)
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