王様は岐伯に言いました。
「岐伯は私の先生であり、
これまでに、いろんな話をしてくれた。
先生からは、賊(そこ)なう風や邪(よこしま)な気が
人を傷つけ、人を病にすると聞いた。
しかし、覆いの中にいて離れず、部屋から出ずにいて、
風や邪気から離れているのに、
突然病になる人がいるのはなぜなのだろうか?」
岐伯は言いました。
「その人は、
きっと、すでに、湿邪に傷つけられていたのです。
血脈の中か、分肉の間に、湿邪が長く留まって、去らずにいたのです、
もしくは、高い所から落ちて、どすんとぶつけた所に、
血が動かずに留まって、去らなくなっていたのでしょう。
あるいは、急にものすごく喜んだか、ものすごく怒ったか、
飲食が正しくなかったか、
寒さ、温かさが、季節に合わなかったために、
腠理が閉じて気が通れなくなったのです。
または、すでに邪気があるために腠理が開いているところに、
風寒の邪気に遇い、その邪気と前からいる邪気が互いに襲いあうと、
血と気が凝結が起こり、寒痹となります。
他には、熱があって汗が出ている時に風を受けると、
その風が、賊風や邪気ではなかったとしても、
熱の原因の邪気が体の内にあるので、加わった風と合わさって、
病が発生します。」