王様は言いました。

 

「鍼を刺すべきでないのは

どのようなのだ?」

 

伯高は言いました。

 

「刺法には、

『熇熇の熱を刺すことなかれ』

『漉漉の汗を刺すことなかれ』

『渾渾の脈を刺すことなかれ』

という文があります。

 

熇熇の熱は、火力の強くて盛んな熱です。

漉漉の汗は、たらたら流れポトポトしたたります。

渾渾の脈は、丸く混ざって乱れ濁って手掛かりとなる端が分かりません。

そして、

病と脈が相応じていなくて、逆になっているのは、

鍼を刺してはいけない、書かれています。」

 

王様は言いました。

 

「では、刺すべきなのは、

どのように分かるのだ?」

 

伯高は言いました。

 

「最も素晴らしい良い医者は、

まだ出ていない病を治療します。

 

その次に素晴らしい医者は、

まだ邪気が盛んでない病を治療します。

 

その次に良い医者は、

すでに衰えている邪気が衰えている病を治療します。

 

しかし、だめな医者は、

邪気が今まさに攻撃してきている時や、

邪気が最も盛になる時や、

脈と病が合っていない時にも、

鍼を刺してしまいます。」

 

王様は言いました。

 

「それ、知っているぞ、

未病を治す医者が、一番良い医者なのだろう?」

 

伯高は言いました。

 

「はい、そうです。

 

邪気の勢いが盛んなのに、

あえて正気を傷つけ弱らせてはいけません。

 

邪気がすでに衰えているなら、

鍼が効いて、必ず治ります。

 

治法には、これについて、

『上工は未病を治し、已病を治せず』

と書かれています。」

 

素晴らしい医者は、病を見極めるから病を治せるのだな、

と王様は思いました。

 

(王様と兵法と治療 終)

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読んでくださりありがとうございました。