このおはなしは、黄帝内経素問より第四十四篇
「痿論」をもとにしています。
岐伯は、本の続きを読んでいる王様に言いました。
「王様が、病の本を読まれるのでしたら、
おすすめの本がありますので、
蔵から持ってきましょうか?」
王様は、ぱっと顔を上げて言いました。
「それは、うれしいな。
岐伯のおすすめとあれば、ぜひ読みたいぞ。」
そこで、岐伯は蔵に行き、本を持って戻ってきました。
「王様が今読んでおられる本は、病の種類が載っていますが、
病のついてのくわしいことが書かれていません。
ですので、もう少し詳しく書かれている本を持ってまいりました。
『本病』と『下経』です。」
現代には、本病も、下経も、残っていません。
長い歴史の中で、どこかに消えてしまいました。
今読んでいる黄帝内経も、素問と霊枢は残ったけれど、
他にあったのは消えてしまったと言われていますし、
素問の中でも、第七十二、第七十三はありません。
そうして消えたかもしれない古典が、
いま、読めているのは、しあわせなことなのだと思います。