岐伯の話で不安が消えると、
王様は、いつもの王様に戻りました。
「顔色はどんなふうに変わるのだ?
目で分かる色の事、知りたいぞ!」
岐伯は答えて言いました。
「分かりました、しかし、王様、
医者は、顔色を見る前に、まずは脈をみますので、
先に、脈について、お話しします。」
王様が、うんうんとうなずきましたので、
岐伯は話し始めました。
「肝と胆の経に歪みがあると、流れが正しくないので、
みぞおちと、腋のくぼみに、気の塊が現れます。
肝痺といいます。
そこに、湿と寒の邪気が入ると
体の下のほうに邪気が居座り、体の上が虚になります。
邪気が下なので、足が冷え、腰が痛くなり、
上が虚なので、頭痛、めまい、たちくらみが起こります。
また、目が見えなくなったり、耳が聞こえなくなったりもします。
肝の脈は、長くて左右に振動する、弦のような脈です。」
王様は、足に湿と寒の邪気が居座っているのを想像しました。
足は、重くて、冷たくて、邪気に居てもらいたくありません。
「心と小腸の経の歪みがあると、
お腹に気の塊がつまって、ごはんが食べられなくなります。
心痺といいます。
それを悩み過ぎて、心が虚していると、邪気が入ります。
病は、胸と腹の間の膈に起こり、胸苦しく、頭痛がします。
心の脈は、ハッハッと短い息のように、早く堅い脈です。」
王様は、不安で心配な人の心の隙をついて
入ろうとする邪気を想像して、怖いなぁ、と思いました。
「脾と胃の経に歪みがあると、
気の塊がお腹の中に現れ、陰陽がひっくり返ってしまいます。
下の気が、上に逆上して来るので
お腹がパンパンにふくれ、
脇と腋がいっぱいになってつっかえます。
その上、手足を使い、汗をかき、風にあたれば、邪気が入ります。
厥疝となります。
疝とは、男の睾丸から下腹部の痛みですが、女にも起こります。
脾の脈は、幅が大きいけど押さえると虚の脈です。」
王様は、男の玉の痛みを想像しました…ああ、痛そうです。
汗かいて風にあたるのは絶対やめておこう、と思いました。