朝七時半、ベッドの中で
Jが出ていくドアの音を聞きながら
思わず、大変だなあとつぶやいてしまった。
この時間帯、外はまだ真っ暗で大雨の中、
最寄り駅まで徒歩15分、電車でシティまで30分、
彼女は20年間そうやって息子三人を育て上げ大学まで出したのだ。

銀行では有能な管理職だけど
毎晩8時前には帰宅して
キッチンで楽しそうに野菜を刻む。
ハーイ、アメリと微笑みながら夕食の準備。
バタバタしてるところは見たことがない。
洗濯機を回しながら、パスタをゆでてる10分間で掃除機をかける。
掃除、洗濯、野菜たっぷりの夕食を終え
洗い物を済ませても(彼女は食洗機を使わない)全部で二時間。
九時半からはワインを飲みながらパートナーと優雅にテレビを見てる。
同時にいくつものことがこなせるのは
知性の証ですね。

先週ロンドン在住の方たちのお茶会で、これとは対照的な話題が上がってた。
中の一人がワーホリの娘さんに部屋を貸してらっしゃる。
この娘さんが、日本人家庭にベビーシッターに行ったところ
家事も手伝わされたと不満を持ち帰って来たらしい。

子持ちの皆さまいわく、日本に比べて親戚付き合いや父母の会など雑事もなく
ただでさえ暇なイギリスで子供の送迎や掃除まで人に頼んで
その家の奥さんは一体何をして時間を潰してるのかというクエスチョン炸裂。
娘さんは、その奥さんを無能とかトロイと批判してたらしいが
私は別のことを考えていた。

イギリスでは、通常、ナニーとハウスキーピングは分けられてると
イギリス人達から聞いてる。
日本人でも心得てる奥様なら、まずベビーシッターに
家事を頼むことはない。
稀に仕事を持ってる女性が(この家のJのように)
兼業で頼む場合は、メイドとしてそれなりの支払いをしてるもよう。
雇う側が物事わかってないなら、雇われる側が
勤め先家庭の不満を言う前に、最初にきちんとこれらの役割と賃金を確認しておけば
トラブルは回避できるはず。

それより、素敵な奥様の話をさせて下さい。
私がベビーシッターさせて頂いたお宅の二人は
常識のかたまりのような立派な方たちなのだ。

素敵ママその①
三人のお子さんのママKさんコスモス
ロンドンにいらして一年以上たつが
ベビーシッターを頼んだのは、この日をふくめ二回だけ。
ご主人の会社のパーティーに同行するためやむを得ずだった。
この方、オムツが取れてない末っ子さん抱えて
上のお子さん二人を毎日三駅離れた学校に送り迎え。

お宅に伺うと
子供用カレーと大人用カレー二つの鍋が煮込まれており
「大人用の方を召し上がって下さいね」と言われた。
その美味しかったこと!子供用は甘口、大人用は本格的な味でした。
デザートも、できあいのアイスやケーキではなく
果物を細かく刻んだフルーツサラダ。
お子さんたちが言うには
奥様の実家は軽井沢の別荘があって、そこで夏休みを過ごすらしい。
本物のお嬢様ほど働き者と読んだことあるけれど、まさに見本のような方でした。

もうお一人もすごい美人の
4才と8ヶ月二人の男の子のママSさんヒマワリ
月に2回のお稽古ごとの時だけ頼まれます。
初めて伺った時、ひろーい家のきれいさにびっくり(*゚ー゚*)
「暇ですから」と、優雅にお茶を飲む姿がまた可憐ブーケ2ブーケ2

「赤ちゃんは寝てばかりいるので、テレビでも見てて下さいね。」
面接に行った時も、一時間お話しただけで
きちんと交通費と金一封が用意されていました。

ロンドンでも日本でも
ベビーシッター先の素敵ママたちに感心するばかりのこの頃。
ロンドン出張にきたもとカレから
何でベビーシッターなんかしてるの?と呆れられたけど
今の世の中、赤ちゃんを抱っこさせてもらおうと思えば
これしかないのよ!
何言われてもいいもんね。
それに、お母様たちとのおしゃべりも楽しいのだ。

赤ちゃんは、幸せを運んでくる。

明日も、素敵ママその③に続く。