来月のアサインが決まった。

中旬からの南イタリア。シチリア・パレルモとカプリ島、ナポリ。
風光明媚で食べ物もピエモンテの次に(個人的感想)美味しい南。

カプリ島は今年三回目、いつ行っても素敵な場所で嬉しいな音符

でも、反面、憂鬱なのが・・・

そう、ツアコン共通の悩みなのですが

今度はどれぐらい騙され、イタリア人に意地悪されるのだろうか
という不安(_ _。)

三人集まれば人の噂話という国民性
ほんっとに露骨な視線でヒソヒソとこちらを見て
ジャポネーゼは、どーのこーの」
多少なりともイタリア語の分かる私は、つらくて苦しくなる。
お客様も自分たちのことを悪く言われてるのが分かるらしく
オドオドとうつむいてる。

あまりにもひどい時は私も立ち上がって
「本当にあなたたちって噂好きね。喋ってないで働きなさい。
イタリアーノ! 
とオニのように仇打ちに出ることもある。

もう一つ、行かれたことない方には意外かもしれないけど
世界でもイタリア人ほどお金に執着の強い国民性は珍しいという現実。
添乗しても住んでみてもその印象は変わらなかった。

彼らの頭の中は、どうやって少しでも良い暮らしにたどりつこうかと
日夜お金儲けのことでいっぱい。

だが、正攻法では難しいお国柄
いかにずる賢いアイデアで人を騙そうかと
年中知恵を絞って考えている。

そして、その標的のナンバー2は、観光客レベルでいうなら
アメリカ人を抜いて我々日本人のような気がする。

被害者のナンバー1は、もちろん同じ国に生きるイタリア人であることは
間違いないでしょう。
散々痛い目にあってきた人のいい私のイタリア人の友人たちは、
「この国では、身内と数名の友達以外信用できない。」とはっきり言う。

この悪知恵というのが・・・

ベタな会計誤魔化しや置いてある物に手をつけるという
初級編は可愛いものとして

私達ツアコンが、添乗中、広場や大聖堂などの観光名所にいると
必ずレストランや土産屋、ブティックなどの営業が近づいてくる。
一流ブランド品店や有名レストランもいるから驚かされる。

もちろん、いちいちしつこい勧誘に応えることは出来ない。
変な店に連れて行ったら、こちらのセンスが疑われるし
ツアコンとしての信用を失いかねないので
慎重にならざるをえないのだが・・・

ある日は、一枚の紙をわたされ

そこには日本語で「OOO添乗員各位
  OOOのショップへお客様を案内するように。

              課長 OO」

ご丁寧に課長名のシャチハタまで押してある。
思わずタメ息が出る。

ここまでの悪知恵と労力を、なぜもっと他のことに生かせないのか。
もっと驚くのは、この子供だましのような手口に引っかかる
新人ツアコンがいるということ( ̄ー ̄;

このような詐欺や「ジャポネーゼ」「ジャポネーゼ」の悪口、
嫌がらせは、五つ星ホテル、航空会社、役所、
警察、銀行にいたるまで枚挙にいとまがない。

前澤由希子さんという料理研究家が著作の中で
ポルト・ヴェーネレのロカンダについて書いておられた。
印象に残ったのは、私もここで同じ目に遭ったから泣き笑い

ロカンダ内レストランのメニューにあった二万リラ(当時)のロブスターロブスター
美味しく食べ終え
会計時に伝票チェック(イタリアではマスト!)すると8万リラついている。
何で4倍?と抗議すると「ロブスターが大きかったから」と
ありえない言いわけのカメリエーレ。
もめるだけもめて
他のカメリエーレに伝票を持って行ったらあっさり2万リラに戻ったという。
いちかばちか、とりあえず騙してみて(この時点では逮捕できませんよね。)
「ダメならダメな時」のスタンス。

でもこれはイタリア語のできる前澤さんだからこその結末
普通の日本人なら、諦めて請求通りに払ってしまったことでしょう。
レストラン経営者を友人に持つイタリア人から聞いた話だが
「地元価格、外国人観光客価格、その上に日本人価格がある」
とのこと。なんともトホホ・・・ですよね。

さらに前澤さんが、レストランでスッタモンダして部屋に帰ってみると
従業員や宿泊客しか出入りできない造りの前澤さんの部屋から
20万リラ盗まれてたそうです。
前澤さんは、(もしやレストランのみんなの泥棒チームワーク?)
と思ったそうですが、そうじゃないと思う人がいるでしょうか?

そして翌日、再度同じレストランで(小さな島だから仕方ない)
今度は印刷メニューのロブスターの2万リラの上から
手書きで「4万リラ」と書かれており
前澤さんが「あっちのお客のメニューを見せて」と言ったら
そこには2万リラ(やっぱり・・・)と。
やれやれ・・・。

カメリエーレは、この日本人を騙すのは無理だと観念したのでしょう。
「俺のおごりだ」と言って、どんどん料理を運んできたそうです。

前澤さんは、喜び、この章の最後は
「このロカンダにはまた必ず行こうと思っている。」と締めくくられていた。
前澤さん・・・なんて良い人*花*

カメリエーレにしてみれば、盗んだ20万リラ(賭けてもいい)の中から
数皿の料理を奢るぐらい安いもの。
それを喜ぶ前澤さんに胸が熱くなった。

何年か前
ごく近しいイタリア人男性から言われたことがある。

「僕は不思議だ。日本人は、ぼーつとしてて赤ちゃんみたいに幼くて
騙すのは簡単だし、何も考えてないように無邪気に見えるのに、
何で日本は発展し、経済大国なんだろう。

反対に、ここイタリアでは、人を信用できないから
いつも騙されまいとかまえた結果、国民は日本人よりシャープ
(この人にはそう思えるらしい・・・)なのに
何で国がこんなことになってるんだろう。」

私は
「答えは、今あなたが言った言葉の中にある。」
と言った。

でも、イタリア贔屓の人の気持ちも分かる。
前も書いたが、良い人は、東京の良い人より善人だったりするのだ。

8月も、そう思えることがあった。
ローマで美味しいトラットリアの多いテスタッチョに
お客様をつれて食事に行った帰り
市バスのチケットを買おうと思ったら、バールはどこも閉まってる。

バスに乗ってドライバーにチケットがないと言ったら
その場の男性が「おれが売ってやるよ」と4枚売ってくれて降りて行った。

で、機械に刻印しようとしたところ
あ~やられた~油断しちゃった~
4枚とも使用済みだった

でも、その場にいた他の乗客たちが
ドライバーに「彼女は騙されたんだよ。おれはお金を払うのを見てた」と
言いにいってくれたのだ。

どこか懐かしいおせっかいの匂い。

この「Always3丁目の夕日」的な
日本の昔にもあった温かさを求めて
人はイタリアへ向かうのかな。

来月は、何が起こるのだろう。
イタリア人との攻防戦は、ツアコンにとって
終わりのない物語です。