スイス大好きの私が、2005年に他でアップしたブログです。

当時、出版を目的にブログを書いていた(書かされていた?)ので

文体がかたい(-。-;)
(その後、少しも書かない私のいいかげんさと無責任さで頓挫)
$ツアーコンダクターの四季


スイスに恋して

私はスイスが好きです。
小学生の作文のような書き出しだけど
スイスへの思いは一言「好き!」
年が明けると私はいつもソワソワし出す。
今年の夏はスイスに行けるだろうかと。
四月、チューリップのオランダ・ベルギー略してオラ・ベル同様
ベストシーズンが限定される国の場合、
一生の内にあと何回というセコイ考え方になってしまうため、
貴重な一回を逃すと損した気分になるのだ。
だから、スイスを希望されるお客様がいない年(滅多にないことだが)は鬱々とする。
なんとかお客様の気持ちをスイスに向けようと試みるのだけど、それも限界あるし。
今年は、幸い早くからK様とご友人五名様ご一行からお申し込みがあって
落ち着いて上半期を過ごせた。

このKさまに対しては、私は特別な思い入れがある。
初めての出会いは数年前のオラ・ベル。
オランダ観光を終えて明日はベルギーという日の夕食、
マーストリヒトのレストランで突然Kさんが倒れてしまわれたのだ。
すぐに救急車が呼ばれ、私は付き添いで同乗して病院に行った。
その間わずか三分の間に、他のお客様たちに今後のことを案内していくのだが
誰もがツアコンがいなくなる不安に怯えきった目でこちらの話をまともに聞かない。
皆様の興奮を収めるのは大変だったが、いざとなったらしっかりやって下さった
ようだった。(やるしかないだろうが。)
私が去った後、レストランから自分達だけで歩いて出発し、
循環走行する私達のバス(よく覚えてて下さった!)を見つけて
タクシーを止める要領で手をあげ、
理由のわからないドライバー(当時まだ携帯は完全に普及してなかった)に
「ツアーコンダクター、ゴー。ピーポーピーポー!」などと必死で説明し、
ホテルに着くと、私が渡しておいたバウチャーでグループチェックインして下さった。
後でフロントに聞いたところ、ここでも皆さんかなり興奮してたらしい。
翌日私の姿を見つけて、安堵の表情いっぱいに駆け寄ってくるお客様一人一人を
抱きしめたくなった。
本当に「初めてのおつかい」に出した母の心境てこんなものかなとわかったりして。
私はというと、Kさんに付き添って救急病院の応急室
(通常は患者以外入らないが通訳が必要なため)に入ったものの、
次々運び込まれてくる急患が、なぜか、それとも普通そういうものなのか、
皆吐いてたり大小漏らしてたりして、凄まじい光景と匂いに
思わずしゃがみこんでしまう。
そんな私を叱るでもなく、「見なくていいよ。これは僕達の仕事だから。」と言って
テキパキと、しかも愛情こめて処置していく看護士たちの、その崇高な姿。
対照的に私は何者なんだろう?
一部の方達からカリスマ添乗員だなんだとお世辞を言われていても
このような状況で、お客様一人にさえまともに付き添えない、この程度の人間なのだ・・・。
「アイムソーリー」ひとこと言うと彼らの神々しさと自分の情けなさで、
涙が風船みたいに膨らんで目に溜まったことを覚えている。
やはり、まだまだなんである。(今現在も)
翌日Kさんは意識を取り戻し、何とか私達と次の目的地まで同行できることになった。
嬉しくて又もや涙ぐんでしまう。
その後、帰国してからもお手紙のやり取りや、東京にあそびに上京されたりして
お付き合いは続いていた。
次はスイスに行きたいと長く希望されてたけれど、
行く直前のアクシデントで二度キャンセル。
今回三度目の正直となって念願のスイス旅行が実現したのだった。
そういう経緯があってのご参加だっただけに、
初日関空で元気なお姿を見たときは感無量だった。
この方がまた、よく出来た方で誰からも愛されるタイプなのだ。
細心の気配りが「私やってます。」という感じではない。
私が男性なら、こういう人を妻にしたいと思うだろうな。
家の中に四季を問わず大輪のヒマワリが咲いてるようなものだもの。
そして私達は、この十日間の旅で、この世の美しいもの、カワユイものの
ほとんどを見たような気がする。

路地に咲く苺の赤
高原に揺れるエンチアンの紫
バターカップの黄色
氷河を削ったフィスパ川のミルク色
アーレ川のエメラルドグリーン
セントバーナードを見て
「ヨーゼフや!」
子山羊を見て
「ユキチャンや!」と叫ぶ団体のオバちゃん達

人は思想信条や宗教に凝り固まって命をかけなくても
目を開けば、こんなにも幸せが溢れているのだ。

スイスに行けない年は?
私は日本にいる時も、
濃紺の空に白い月の完璧な丸さを見ただけでも喜びを感じる。
そういう幸せを見つけられないなら大きな幸せをも見つけられずに
一生を終えてしまうだろう。
そのことに気付けてよかったと
心から思う。



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2005年07月04日

スイスは天国のようなところですが
Kさまは、本当の天国に召されました。
そのたおやかな優しさとひまわりのような笑顔を、
これからも忘れることはありません。
あらためてご冥福をお祈りします。