2日前の雨が止むと、分かりやすく空気が変わった。
春だ。
久しぶりのYZF-R1は、なんと11月以来。
ずいぶんほったらかしだが、問題なく一発始動。
機械とはいえ、従順で健気で殊勝。嬉しくなる。
ゆっくり暖機の後、スタート。
エンジン、車体、タイヤ、おかしなところはないか、各部の感触を確かめながら、徐々に速度を上げていく。
確かめるのは私の技術も。交差点を曲がるだけで、腕が錆びついているのを感じる。ひとつずつ取り戻さないと。
忘れていた春の風が首筋を撫でる。こんなに心地良いものだったか。
朝寝坊したので遠くは行けない。
今日は奥琵琶湖パークウェイにする。
1年を始めるのにちょうどいい、私のホームコースだ。
対向するバイクからたくさん挨拶をもらう。湖岸は特に、いい文化が根付いている。
民家が途切れ、気持ち良く走れる区間へ。
ちょうど目の前に1台のバイクが。しかもかなり元気のいい走り。それについていく。
その古いGSX-R1100は、ほぼリーンウィズのフォームで軽やかに走る。
速度は私の9割近いか。今シーズン初の走りなので、いろいろ確認するのにちょうどいいペースだ。
ブレーキの引き方、荷重の載せ方、ステップワーク、頭の位置、などなど。
思いがけず先週もこの道はRX-8で走った。路面状態は悪くない。工事の箇所が無いことも知っている。安心してついていく。
湖岸から登りが始まる区間で、前走車の追い越しと共に、私が前を走ることになった。
さっきよりも少しだけペースを上げて、小さいRのカーブを楽しむ。
一気に展望台へ。
バイクを停めると、すぐにGSX-R1100さんも到着した。
年配のオーナーさんから「軽そうに走るのぅ」と、お褒めの言葉。「古いバイクはやる事いっぱいで大変じゃ」と。
私のも最新バイクとは違うが、聞けば88年製のバイクらしい。それはさすがに時代が違う。でも安定してお上手でしたよ。
先週の霧の中とは違い、うららかな空気。
長ベンチに寝転がって昼寝したい気分。昨晩も深酒だったので。
次々、クルマやバイクが入れ替わっていく。
そこにケーターハムスーパーセブンがやって来た。おおおお。
黄色はJPEやR500でも採用された特別な色。というか、そもそも特別なクルマである。
人生で一度は、と思うが、最近は価格が高騰してとても手が出ない。
…は、さておき。
R1100さんは引き返したが、私は一方通行を走り抜けよう。
道の駅でそばを食べる。こういうのも久しぶり。
その後、また昼寝したい気分を抑えて、再度パークウェイへ。
どこか違うところにも行こうかと思ったが、今日はとにかくここを走ろう。
2本目。
目に見えてペースが上がる。
忘れていた。
バイクライディングに大事なのは、技術よりも心意気だ。
もっと低く、もっと前へ、もっとコンパクトに。カッコいいフォームを目指せば、それだけでペースは上がっていく。
現時点で自分にできるベストの走りを目指す。
午後はバイクも増えてきた。
3本目、4本目。
RX-8も速い乗り物だと思っていたが、R1は速さの質がまったく違う。
私はクルマよりもバイク人間だ。
バイクは本当に楽しい。
集中力がどんどん高まっていく。
そして全身を使って走るのは気持ちがいい。
走るほどに、心のわだかまりもスッキリと無くなっていくようだ。
新しい私になろう、というと大げさだが、ちょうど年度も替わる。
今より良い自分になれるように。
そんなことを思わせる、春のスタートになった。