(「賄賂大作戦」からの続き) 

 

 賄賂として渡す御土産は用意して来ましたが、果たして中国人を凋落する事が出来るのか、もし、彼らの面子を潰せば逆効果ですし、ただ土産を取られるだけかも知れません。

 

 私の一世一代の大勝負です(そんな大層なもんやないやろ、ただ土産配るだけやん)。

 

 出迎えの国営企業の担当者である李さんと固い握手をし、李さんの用意したワゴン車に乗り込みました。「この車は公司(会社)の物ですか」、「いえ、タクシーです」、と言う事は、公司の人間は彼だけです(しめしめ)。

 

 私は李さんへの土産を取り出し、「李先生に御土産を持って来ました、どうぞ」。李さん袋の中を見てびっくりしています。「今回、私が来た目的は品質改善です、貴方と貴方の公司の協力が不可欠です」、「・・・」。

 

 「私達の事業が上手く行くかどうかの瀬戸際です、上手く行けば私はまたここへ来る事が出来るでしょう、その時はカメラをプレゼントしますよ、だって、鉱山や荷物の状況を写真に収めて送って欲しいからです」。

 

 「解りました、一緒に努力しましょう、私達もこの仕事に期待しているんです、何でも言って下さい」。よっしゃ~、イッチョあがり~。「ありがとう、頼みましたよ、やっぱり貴方は頼りになるわ~」(心にもない事を・・・)。

 

 李さんは御土産をカバンの中に無理やり押し込みました。「ははぁ~ん、ホテルで誰か待ってるな、誰だろう、まぁいいや行けば解るから」。

 

 ホテル(長江大酒店)に着くと、何さん、孫さん、通訳が待っていました(こりゃまた都合がいいや)。明日の簡単な打ち合わせをする為、Kさんの部屋へ。

 

 Kさんが銘柄は忘れましたが洋酒(高いやつね)と御菓子を御土産として渡しました。そして私の出番です。何さんに日傘と折り畳み傘を、孫さんと中国側通訳に名刺入を渡しました。

 

 何さんは、両方の傘を開いて「好看、好看(素敵、素敵)」と言いながら交互に差しながら燥いでいます。それに「漂亮、漂亮(美しい、美しい)」と言いながら合の手を入れる孫さん。

 

 流石、13年後、総経理(社長)になる男は違いますね。それに引き換え後れを取って、ただ笑っている李さん。アンタは出世出来そうにないね。孫さんを見習いなよ・・・(お前もな)。

 

 もう一人、孫さんと同じ匂いのする人間が・・・。商社の北京事務所から同行している日本側の通訳の邱ちゃんは、自慢の一眼レフで、グラビア撮影の様にパシャパシャ撮っています。

 

 「邱ちゃん、お前もか」、アンタきっと偉く成るよ・・・。

 

 この当時、中国の女性はオシャレに無頓着で、御化粧すらしていませんでした。国情がそうさせたのでしょう。その証拠に何さん御年46歳(かぞえですから満45歳)の燥ぎ様ったら・・・。

 

 さて、ダメ押です。副賞のカード式ラジオを李さんに渡しながら、「今回の出張の成果に事業の存続がかかっています、私がまたここに来られる様に協力して下さい、それまで貴方の御土産は保留です」。

 

 「OK、OK、出来る限り協力しますよ」。解ってるじゃん、案外アンタ、演技はそこそこ上手いのね・・・。ナイスです。

 

 他の3人にも副賞を贈呈すると、何さんが李さんに歩み寄り、肩を叩きながら慰めています。あれだけ燥いだ手前、部下への配慮でしょう。何らかの譲歩を引き出せるかも・・・。

 

 明日朝8時に蘄春県へ向け出発する事を確認し、国営企業の面々は部屋を後にしました。

 

 部屋の外まで見送ると、邱ちゃんが「ロビーまで送って来ます」、「あ、ありがとう、頼んだよ、後ゆっくり休んで、私達はもう休むから」とKさん。

 

 私が部屋に帰ろうとすると、Kさんが「もう寝ますか」、「何もする事ないですからね」、「もし良かったら、ちょっと飲みませんか」、「良いですね、じゃあ、酒のツマミ取って来ますよ」。

 

 こうして、Kさんが購入したもう1本の洋酒(高いやつね)を飲みながら、今後の作戦会議と相成りました。邱ちゃん抜きでね、だって彼は中国人ですから、そりゃあ、聞かれたくない話もありますよ・・・。

 

 

(つづく)

 

 

 

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